子どものケアに奔走 大村の小児科医・出口貴美子さん 福島「飯舘村までい大使」に

 東京電力福島第1原発事故で一時全村避難となった福島県飯舘村で、子どもたちの心のケアを続けている長崎県大村市諏訪3丁目の小児科医、出口貴美子さん(55)が1月、村の魅力を発信する「飯舘村までい大使」を委嘱された。長崎県民では初めて。「飯舘は第二の故郷。ニーズに合った支援を続けたい」と意気込んでいる。

 「までい」は福島の方言で「心を込めて」「丁寧に」という意味。出口さんは震災直後の2011年4月、福島県いわき市に入り、避難生活での子どもや大人の不安を解消しようと、心のケアに奔走。2012年7月まで9回にわたり避難所などで相談会や講演会を開いた。2012年10月からは約2カ月に1回、飯舘村で活動している。

 「当初は3世代、4世代で暮らしていた家族が離れ離れになり、母親たちも不安定になっていた」。相談会では未就学児の発達障害、吃音(きつおん)、頻尿、言葉の発達の遅れなど、さまざまな不安の声が寄せられた。子どもの周囲の大人たちに対する支援にも力を入れた。「村役場との連携が不可欠だった」と振り返る。

 飯舘村の避難指示は2017年3月末に大部分で解除された。昨年4月に村立の認定こども園と小中学校が再開されたが、居住率は依然低いという。「復興のスタート地点に近づきつつある。子どもには遊びと教育が必要。元気な“いいたてっ子”が育ってほしい」と願う。

 今後は「までい大使」として「長崎と飯舘の絆が強まるような活動をしたい」と決意を新たにしている。

子どもたちに遊びの場を提供する出口さん=福島県飯舘村(出口さん提供)

© 株式会社長崎新聞社