佐世保と安全保障 沖縄とのつながり(上)軍事面 「将来は水陸機動団配備も」

 佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に3月、離島防衛を主任務とする水陸機動団が発足した。「日本版海兵隊」とも呼ばれる。そのモデルとなった米海兵隊が駐留する沖縄を歩き、佐世保との軍事的つながりや市民生活への影響について考えた。
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 5月中旬、強い日差しが降り注ぎ、エメラルド色に輝く海を際立たせる。名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに隣接する砂浜。波音が等間隔でリズムを刻む中、フェンスの向こう側に数人の海兵隊員が現れた。服のまま海に入ると、泳いで数十メートル先に漂うゴムボートへ。乗り込むと沖合を目指した。
 「ここは佐世保にとって無関係ではない」。米軍の動向を監視する写真家、山本英夫さん(66)が1枚の写真を手に沖合を指さした。写るのは佐世保が母港のドック型揚陸艦アシュランド。3月、数キロ先の沖合に現れ、シュワブを出発した水陸両用車数両をハッチに吸い込み、そのまま姿を消したという。
 このほか佐世保が母港のドック型揚陸艦ジャーマンタウン、ドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイ、1月まで配備されていた強襲揚陸艦ボノム・リシャール。これらの艦船は海兵隊を乗せたり、降ろしたりするため年に数回、沖縄に立ち寄っている。
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 水陸機動団も“前身”の西部方面普通科連隊(西普連)のときから沖縄との軍事的つながりは深い。
 防衛省によると、西普連は2012年度以降、キャンプ・ハンセン(金武町など)やキャンプ・コートニー(うるま市)などで米海兵隊と研修や共同訓練に計14回取り組み、水陸両用作戦の練度を高めてきた。
 そのつながりはさらに強くなる可能性がある。約2100人で発足した機動団は今後、3千人規模になる見通し。今後の体制について防衛省は「決まっていることは何もなく、検討状況も答えられない」とする。しかし残りの部隊は、沖縄のキャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンに配備される見方が強い。
 軍事問題に詳しい琉球大の我部(がべ)政明教授(国際政治学)もそのような見解を持つ一人だ。沖縄に水陸両用車やエアクッション型揚陸艇(LCAC)が出入りできる施設がすでに整備されていることを指摘。「沖縄の海兵隊はイラク戦争に送られており、スペース的にも機動団を受け入れることはできる」と分析する。
 さらに、将来的には米海兵隊に代わるように機動団が沖縄に入ってくるとみる。「部隊の司令部は、訓練施設が整った沖縄にあったほうが動きやすい。現在佐世保にある機動団の機能がそのまま沖縄に移り、その残りが佐世保に置かれることも十分に考えられる」と指摘する。

キャンプ・シュワブに隣接する砂浜で、3月に撮影した写真を手に「ここは佐世保にとって無関係ではない」と話す山本さん=沖縄県名護市

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