【ホンダF1甘口コラム プレシーズンテスト特別編】確かな信頼性を武器に年間21戦を3基のPUで戦うことに現実味

 2019年からレッドブルとトロロッソの2チームにパワーユニットを供給するホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。今回はバルセロナテストの状況を甘口の視点でジャッジ。

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 380周。これは、ホンダがF1に復帰した2015年のプレシーズンテストで走行した総周回数だ。このテストで最も多くの周回を走り込んだのがメルセデスで3993周。メルセデスは4チームにパワーユニット(PU/エンジン)を供給していたから、1チームあたりに換算すると998周となるが、それでもマクラーレンとパートナーを組んでいたホンダの2.6倍のマイレージを稼いでいた。

 翌2016年のプレシーズンテストでは、バルセロナの2回(8日間)のテストでトータル710周と、1年前の約2倍の走り込みを行なった。前年はバルセロナの2回(8日間)のテストだけでなく、その前にヘレスでも1回テストが行われ、延べ12日間テストしていたから、一日あたりで比較すると、2015年の31周から、2016年は88周と、信頼性は2倍以上に向上していた。

 ところが2017年、ホンダの信頼性は大きく失墜する。レイアウトと燃焼方法を新しくしたパワーユニット『RA617H』が8日間のテストで走行できたのは、わずか425周。マクラーレンの信頼を裏切ったホンダは、その年限りで関係を解消することとなった。

 新たにトロロッソとパートナーを組んで臨んだ2018年。ホンダパワーユニットの信頼性は再び向上する。この年はヨーロッパを寒波が襲い、大雪のために1回目のテスト3日目はほとんど走行できなかった。

 それでも、ホンダは2年前の710周を上回る822周を走り込んだ。最も多くの周回を走行したメルセデスは3チームで2570周。1チームあたりで比較すると約856周なので、プレシーズンテストに限って言えば、信頼性はライバル勢に対して、追いつきつつあった。

 迎えた2019年。1回目のテストを終えた段階でホンダの総周回数は復帰後、初めて最下位を脱出。

 これは2018年からパートナーを組んでいるトロロッソだけでなく、2019年からはレッドブルも加えた2チーム供給となったことが大きな要因だが、同じ2チーム供給のルノーの878周、3チームに供給しているメルセデスの946周(ウイリアムズのテストは1日半)を上回る957周は、堂々たる数字だった。

■ついに信頼性でライバル勢に追いついたホンダ製パワーユニット

 2回目のバルセロナテストでは、レッドブルがパワーユニット以外の問題で十分な走り込みを行えず、8日間全体の総周回数は1768周にとどまり、最下位に終わったが、同じ2チーム供給のルノーとの差はわずか67周。1チームあたりで比較すれば、メルセデスの794周を上回る884周を走行。復帰5年目にして、ホンダの信頼性は、ライバル勢に追いついたと言っていいだろう。

 しかも、ホンダは2019年から2チームに供給を増やしながらも信頼性を向上させていた。供給先が増えるということは製造するパワーユニットの数が増えるだけでなく、そのパワーユニットを走らせる現場のスタッフも約2倍となる。

 今回のテストが2チーム体制で臨むホンダにとって初の実戦となったが、トロロッソのテクニカルディレクターを務めるジョディ・エジントンは、「テストでホンダは完璧な仕事をした」と称賛。

 レッドブルのチーフレースエンジニアを務めるギヨーム・ロクランも「パワーユニットは十分な信頼性を見せてくれたし、ホンダの仕事ぶりは素晴らしかった」と満足していた。

 今回のテストではホンダが2チームにパワーユニットを供給していたことで、大きな収穫もあった。2回目のテストではレッドブルが十分な走り込みをできなかったが、トロロッソがそれを補うようにしっかりとマイレージを稼いでくれたおかげで、ホンダは開幕前に1基で4000kmを走破することができた。

 1グランプリの走行距離が約700kmなので、年間21戦を3基のICEで乗り切るためには1基あたり4000km以上の信頼・耐久性が求められる。その課題を今年のプレシーズンテストで復帰後5年目にして、初めてクリアできたことは開幕へ向けて、大きな収穫だった。

 ニューマシンを走らせるプレシーズンテストで最も大切なことは、できたばかりの新車と新しいタイヤを理解するために、少しでも多くの周回を走ること。その点において、今年のプレシーズンテストでのホンダは賞賛に値する仕事をしていたと言っていいだろう。

辛口コラムはF1速報WEBで連載中■ホンダF1辛口コラム プレシーズンテスト特別編:トップ争いする上で、レッドブルに足りないもの

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