進め「ご当地おでん」探検隊/出汁の達人とファミマが真剣勝負

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ファミマの全国7地域おでん

ファミマは今季、「つゆの旨味がたっぷり染み込んだおでん」をテーマに、出汁も具材も刷新したという。

そこでファミマ本社に、「全国のおでんの比較検討をしたい」と打診すると、「前例がない」と驚かれつつ、7地域ごとのおでん出汁、部分的に異なる具材も供出してもらえることになった。

たとえば北海道・東北は「鰹・昆布をベースに、焼き干しと貝の旨味を効かせた濃厚なつゆ」、中部・東海は「むろあじのだしに、牛と鶏の旨味を効かせた甘みとコクのあるつゆ」と、地域ごとに出汁のコンセプトはかなり違う。

その味を分析するにふさわしい、素材に精通した人物は誰か。本誌は、鰹節の歴史や出汁の取り方を全国にレクチャーしてまわっている、東京・晴海の鰹節荷受け問屋「タイコウ」の二代目・稲葉泰三さんに白羽の矢を立てた。

「コンビニおでん? もう何十年と食ってないなぁ」と言いながらも、稲葉さんは快く引き受けてくれた。

「でも、だいぶ進歩したって聞いてるよ。試食しろ? 言っとくが、俺は辛口だぜ」

一方、ファミマも「強い香りが特徴の、焚き納屋式焙乾の、焼津産鰹節を使用」「北海道産真昆布は、低温長時間と高温短時間の2種類の抽出方法で、旨味を最大限に引き出し」と自信のほどが窺える。

「コンビニおでん」VS.「違いのわかる男」。世紀の対決が始まった。ファミマ本部から届いた出汁と具材は、中型段ボール箱2箱ぶん。広報室からの要望はただひとつだけだった。

「具材を煮てこそおでんなので、しっかり手順どおりに作ってみてください」

しかし、案外根気が要る作業だ。冒頭の写真のとおり、定番となるおでん種も、地域によって微妙に異なる。なお、出汁の味の違いをしっかり見るため、「個性派」の種は除外した。実際は電気鍋だが、こちらはガスを弱火にし、30分を目安に一気に火にかけていく。

次第におでんの香りが立ちこめてくると、従業員もそれにつられて集まってきた。完成前からちょろっと味見をしだす方も。

すぐさま侃々諤々が始まり、的確に使用材料を見極めていく。

「関東のわりにはカツオの味がおとなしい」

「関西はやはり昆布の風味が強い。しっかりと甘みを感じる」

「中国・四国は小魚使っているね」

「九州もアゴを強く感じるよ」

「沖縄は動物系の癖があるな。甘めで味も濃い」

「好き嫌いが出ないよう、尖った個性は控えめ。コンビニは万人に愛されなくちゃいけないからね」

「そのへんが企業努力なんだろう」

ソムリエがワインをテイスティングするように、口に含んだ出汁を確かめていた稲葉さんだったが、鍋もいい具合に煮込まれてきた。

「もういいや、食べようぜ」

稲葉さんのひと言で、あとはおでんパーティとなったのだった。

【ファミマの「全国7地域定番おでん」】

●関東
カツオに昆布と野菜の旨味をプラスした出汁。関東の特徴、ちくわぶは、東海や北海道・東北にも

●東海
ムロアジに牛と鶏の旨味がある出汁。うずら巻の刺さったいわゆる「チビ太のおでん(屋台風おでん)」が固有

●九州
カツオと焼きアゴの出汁に、鶏、牛、椎茸の旨味がきく。うどんに入れても人気の「まる天」も九州ならでは

●北海道・東北
カツオ、昆布をベースに焼き干しと貝の旨味をきかせた出汁。稲葉さんは「磯っぽさを感じる」と評価

●関西・北陸
昆布をベースに、カツオとサバをきかせた出汁。ファミマでは、「焼豆腐」はこの地域の限定品だ

●中国・四国
イリコ出汁に、鶏と昆布の風味。ここから西は、ちくわが全体に焼き目を入れた「全焼」に

●沖縄
カツオに昆布と鶏、豚の旨味もする出汁。沖縄そばにしても美味しそうな動物系の出汁が特徴だ

取材&文・鈴木隆祐

(週刊FLASH 2019年3月12日号)