<再生への視点 統一地方選を前に>・16完 松浦市区 観光地域づくり 「体験型」の充実が課題 市民参画で活性化狙う

 玄界灘を望む松浦市。かつては石炭産業で栄え、戦後のピーク時には約6万人(合併前の旧町含む)を数えた人口も、今は約2万3千人と県内13市で最も少ない。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、このまま進むと2040年には約1万6千人にまで減少するとみられている。
 危機感を抱く市は人口減少を抑え、人を呼び込む施策として、中心市街地の活性化や、光ケーブルなど情報通信基盤の整備促進、医療、福祉関連施設の整備など「住み続けたいを実感できるまちづくり」に取り組む一方、交流人口の拡大にも力を入れる。
 市内には松浦党発祥の地や、鷹島の元寇(げんこう)海底遺跡、福島の土谷棚田など全国的に知られた素材や観光地はあるものの、観光目的で訪れる地域にはなっていなかった。市によると、従来、市の観光は、修学旅行を対象とした「体験型」が中心。だが、その修学旅行の受け入れも近年は減少傾向にある。こうした中で、松浦の強みは「体験型」のコンテンツが約80種類と豊富で、受け入れ態勢が整っていることだ。現在、民泊に約450軒、インストラクターやガイドに地元の約800人が登録している。市食と観光のまち推進課の木原俊之さん(44)は「修学旅行には流行があり、シーズン以外にインバウンド(訪日外国人客)を含めた一般旅行者をいかに誘致するか、培った『体験型』のノウハウをどう生かしていくかが課題となる」と現状を分析する。
 交流人口の拡大に向け、市が本年度から取り組むのが「観光地域づくり事業」だ。次代を担う若手の自営業者ら10人を中心メンバーとしてアイデアを出すだけでなく運営にも携わってもらい、手始めに、日本在住の外国人や留学生らを招いた「にっぽん体験」、全国に約14万人いる「松浦さん」を対象にした「松浦さんのルーツ探訪」といった二つのユニークなモニターツアーを企画。2月23、24の両日に実施した。
 「にっぽん体験」ツアー参加者で、福岡市で多言語英字メディア「Fukuoka Now」を発行しているニック・サーズさん(58)=カナダ出身=は、市内の道場でなぎなたを初めて体験し、松浦ならではのコンテンツを堪能。一方で、「移動時間を利用して地域の歴史や情報の発信があれば、もっと楽しめたと思う」と注文を付けた。
 市は今後、モニターツアーの声を踏まえ、ニーズや改善点を探り、企画をより磨き上げていくか、違った切り口にするか検討する。「市民の参画を促すことで地域の活性化やまちづくりにつながるはず」と手応えを口にする木原さん。人口県内最少の市の挑戦が続く。

モニターツアーでなぎなたを初体験した外国人客=松浦市星鹿町の道場

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