米国エネルギーでも覇権、ロシア抜きサウジに迫る

「シェール革命第2波」IEA報告の衝撃

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太田清

共同通信大阪支社統括整理部長

太田清

共同通信大阪支社統括整理部長

共同通信社入社後、広島支局、大阪社会部、外信部、経済部、ベオグラード支局、モスクワ支局、ローマ支局、47NEWS編集長などを経て2019年10月より現職。イトマン事件、阪神大震災、コソボ紛争、ユーゴ空爆、モスクワ劇場占拠、アフガン紛争、ギリシャ財政危機、東日本大震災などを取材。

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米ノースダコタ州にあるシェール層で、石油を掘削する作業員=2013年7月(ゲッティ=共同)

 米国は2021年にネットでの石油輸出国となりその後も輸出量を拡大、24年にまでにはロシアを抜き世界第2の輸出国になり、トップのサウジアラビアに迫る―。日本など先進国を中心とし、中長期の世界のエネルギー需給見通しなどを行っている国際エネルギー機関(IEA)は11日、2024年までの石油市場見通しの報告書を発表し大胆にこう予測した。「米国のシェール革命第2波」(ビロル事務局長)は世界のエネルギー事情にどのような影響を与えるのだろうか。 (共同通信=太田清) 

 ▽「驚くべき」成長 

 報告によると、18年に日量220万バレル増という「驚くべき」記録的成長を果たした米国は24年までの間、世界的な生産能力の伸びのうち、7割に当たる日量400万バレル程度増やす。米国は現在でも世界最大の産油量を誇っているが、今後は国内消費を上回る石油を生産、21年に輸出が輸入を上回り石油の純輸出国になるほか24年までに日量900万バレル(石油製品を含む)の輸出が可能に。報告は「米国の輸出急増は調達先の多様化につながり、世界、特に需要の伸びの著しいアジアでのエネルギー安全保障に貢献する」と指摘した。 

 米国の生産急増を牽引しているのが、言うまでもないシェールガス・オイル革命だ。泥岩の一種「頁岩(シェール)」には大量の天然ガス、原油が含まれるとされ埋蔵量は巨大であるものの、採掘が難しいとされてきた。しかし、頁岩層に水を送り込んで岩に隙間をつくるなど技術革新が進んだほか、資源価格の高騰で採掘の採算が合うようになり2000年代から北米で生産が拡大。 

 14年以降、原油価格が急落し採算が取れなくなったシェールオイルの生産も一時伸び悩んだ。それでも減産に踏み切らないサウジなど産油国の「シェールつぶし」とも言われたが、17年以降に油価が回復したことに加え、さらなる技術革新や合理化により安価に生産できるようになり、生産は「シェールつぶし」を乗り越え急拡大している。また、輸出面にあたってはインフラ整備も見逃せない。これまでネックとなってきた南部テキサス州などガス・油田地帯からのパイプラインや港湾施設建設にめどが立ったことから、国内消費だけでなく輸出に振り向けることが可能になった。 

 ▽フリーハンド 

 日本総合研究所の藤山光雄主任研究員は米国が純輸出国になることにより、中東、ロシア、南米などの産油国への依存度が低下、「外交政策でよりフリーハンドを持つようになる」と予測する。ただでさえ「アメリカ・ファースト」のスローガンの下、「米国第一主義」の傾向を強めているトランプ政権は、米国のアキレス腱とも言える石油依存というくびきから解き放されさらに大胆な政策を実行する可能性がある。日本にとっても、調達先の多様化につながることから一義的には歓迎すべき事柄であるものの、米国の政策次第で中東地域が不安定化する懸念も強まってくるだろう。 

 一方、クリミア併合・ウクライナ内戦や米大統領選への介入疑惑などで米国との対立を強めるロシアにとっては米国の輸出拡大は大きな頭痛の種だ。欧米の経済制裁による投資・技術協力の制限のため、現状のロシアの原油生産は伸び悩みが顕著で、さらに競争相手として米国が加われば価格競争は激しくなり、ロシアの国際的プレゼンス低下も懸念される。 

 IEA報告書は世界の石油需要について、米中の貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱などにより伸びは鈍化するものの、中国やインドでの旺盛な需要は健在で24年までに「需要のピーク」が訪れることはないと予測している。