人気のドラァグ・クイーン3人組によるデビュー作。全曲を『残酷な天使のテーゼ』の及川眠子が作詞、『あなたのキスを数えましょう』の中崎英也が作曲し、一流のポップスに仕立てる。当然、真ん中にあるのは歌心だ。
『愛なんてジャンク!』は「愛なんて」「捨てなさい!」と言い放つEDM系のハードなポップスで、及川がヒットに貢献したWinkの91~92年の作風。3人が強がりの裏にある哀しみまで歌い込んでいる。
カップリングの3曲は、各人のソロを収録。華麗な和風ポップスの『流砂の恋』はドリアン・ロロブリジーダが歌唱。「縷々として あゝ縷々として」の部分が、凛としつつ切なくもあり印象的。しっとり系のバラード『崖の花』は、ちあきホイみが歌唱。韓流ファンも酔いそうな繊細な美声で、恋の脆さを歌い上げる。
そして、夜限定の恋を描いたミディアム調の『ディレンマ』はエスムラルダの歌唱。愛しいながら、すべてを愛せない板挟みのもどかしさが、気品ある声から伝わる。3曲とも歌モノとしての魅力が強いので、サウンド偏重のヒット曲に飽きた人に是非オススメしたい。
4曲のカラオケがあれば、なお喜ばれるのかも。ともあれ本作から、目では見えないものを理解する心が養われるはず。
(八方不美人・1500円+税)=臼井孝