迫る 県議選 平成最後の戦い・1 長崎市区(定数14) 地盤重なり局地戦激化

 平成最後の統一地方選の第1ラウンドとなる県議選(3月29日告示、4月7日投開票)が迫った。今のところ、16選挙区の定数46に前回より2人多い62人が立候補を予定している。各選挙区の直前情勢をリポートする。

 3月上旬の夜、県議選長崎市区に出馬を予定している現職の会合に、支援者約50人が集まった。「10番目もままならない。12、13番目では」-。その現職が今の感触を明かすと、支援者からは追い打ちを掛けるように厳しい言葉が飛んだ。

 「本当に12、13番目にいるのか」「選挙は下手」

 2月中旬の時点では「大丈夫との思いがあった」と曇った表情を見せた現職。自身のスケジュールの空いた時間帯を支援者らに紙で示し、知り合いに紹介してくれるよう頼み込んだ。

 定数14に17人が名乗りを上げている県都の同市区。前哨戦が激しさを増し、市北部や東部で地盤が重なる局地戦も繰り広げる。

 前回5人を擁立し、4人が当選した自民。今回は7人が出馬を予定し、保守票の分断に「キャパシティーを超えている」と悲鳴が上がる。「党ではなく個人の戦いになる」との見方も強い。

 これに対し、前回の民主から野党分裂を経て初めての統一地方選に挑む国民民主は2人、立憲民主は1人をそれぞれ擁立。集票を担う支援労組の弱体化など課題を抱える中、新旧交代がスムーズにいくかが焦点だ。

 自民は同市区で最高齢の野本三雄が7選に挑む。今回は車いすでの戦いで、「くまなく回れない」と焦りを隠せない。そこに、前回61票差の次点で涙をのんだ久保田将誠が「支持者に『気にしないでいい』と言われた」として、野本の地盤三重地区で決起集会を企画する。野本は憂う。「北部はぐちゃぐちゃだ」

 その三重地区に住み、東長崎地区に事務所を構える江真奈美は、浅田眞澄美とともに3月に来崎した元防衛相の稲田朋美と街頭演説。一緒に手を振ったが、内実は2人の“女性票争奪戦”も熱を帯びる。

 自民入党後、初の選挙を迎える浅田は市中心部が地盤だが「自民公認はプラスかマイナスか」と案じる。一方、江は同じ県議会会派の下条文摩左の引退に伴い出馬する長男、博文と東長崎地区で競合。博文は「父を知っていても私を知らないとの声がある」と浸透に躍起で、自民内の票の奪い合いは激しくなりそうだ。

 前田哲也は、城栄地区周辺で社民の坂本浩、初めて挑む無所属の原拓也と地盤がかぶる。前田を支える地元商店街組織の幹部は「まだ選挙モードではない」と盛り上がりに欠ける現状を危惧。坂本も「昔に比べ社民の組織票は当てにならず、票読みできない」と苦悩を口にする。

 こうした中、組織力の弱さが否めない原に、改選後の勢力争いも見据えた自民県議団2会派がそれぞれ接触。企業を紹介するなど後押しの動きを見せる。

 唯一、市議から転身を目指す浦川基継は今月、自民の公認を得た。「新人で議員経験者は自分だけ」と強調するが、4年前の市議選は下位当選。ある市議は「浦川が属する市議会会派も自分の(市議)選挙でいっぱい」と説明する。

 国民民主は引退する渡辺敏勝の後継として中村泰輔が出馬予定。しかし陣営関係者は実動部隊の三菱労組員の減少や知名度不足を危ぶむ。前回、渡辺はトップ当選だが「その票がそっくり入る思いは一切ない」。深堀浩も九電労組長崎支部などの支援を受け、決起集会を開くなど現職の存在感を際立たせようと必死だ。

 立憲民主は前回落選した赤木幸仁が再挑戦。「4年前、金も職も失った」とつじ立ちに精を出してきたが、支援労組関係者は「組合票はどうみても3千票。浮動票がどれほど取れるのか」と読めずにいる。

 公明は麻生隆、川崎祥司の現職2人が地域を一定すみ分けて回り、議席死守が目標。自民関係者から公明の固定票をうらやむ声も聞かれるが「安泰の根拠なんか、どこにもない」と楽観論の火消しに躍起だ。共産は堀江ひとみが市内の広い範囲でつじ立ちを続け、唯一の議席維持を目指す。

 ほかの地区に対し、今のところ出馬予定者数が少ない南部。無所属の中山功が支持拡大を狙い、引退する渡辺の地盤、戸町地区にも攻勢を掛ける。

 有川好彦は「選挙は一人でやる」と独自の戦いを始めている。=文中敬称略=

 ■立候補予定者

▼長崎市区
野本 三雄 81 自現(6)
浅田眞澄美 52 自現(3)
江 真奈美 51 自現(2)
前田 哲也 55 自現(2)
浦川 基継 46 自新
久保田将誠 47 自新
下条 博文 43 自新
赤木 幸仁 34 立新
深堀  浩 53 国現(2)
中村 泰輔 38 国新
川崎 祥司 56 公現(2)
麻生  隆 64 公現(1)
堀江ひとみ 59 共現(3)
坂本  浩 60 社現(1)
中山  功 70 無現(5)
有川 好彦 56 無新
原  拓也 50 無新

 【おことわり】立候補予定者名簿の政党は衆院勢力順(自民=自、立民=立、国民=国、公明=公、共産=共、社民=社、無所属=無)。同じ政党内は現職、元職、新人の順で、当選回数(丸数字)ごとに五十音順。

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