子どもの虐待防止 リスク要因の評価で対応

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 子どもへの虐待が全国的に急増し、幼い命が失われる事例が多発しています。亡くなる子どもは生後間もない場合が多く、周産期医療の面からも虐待の防止は急務となっています。新生児や周産期医療、虐待の問題に詳しい熊本大病院新生児学寄付講座の三渕浩・特任教授に聞きました。(高本文明)

 -子どもへの虐待はどれぐらい発生していますか。

 「警察庁のまとめでは、2018年に虐待を受けた疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の子どもは、前年に比べ2割増え8万104人に上り、初めて8万人を超えています」

 -熊本県内ではいかがですか。

 「17年度に県内の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は、過去最多の1248件に上り、この10年で約4倍に急増しています」

 -虐待によって命を落とす子どもたちもいます。

 「2003年から16年度までの心中以外の虐待死は727人に上り、0歳児がほぼ半数を占めました。加害者の6割近くは実母でした。16年度は49人で、0歳が32人、半数の16人は生後1カ月に満たない赤ちゃんでした。不審な死亡例を含めると、毎日1人の子どもが虐待によって死亡しているかもしれないと考えられています」

 -妊娠、出産から新生児期までの時期は大切です。

 「妊娠22週から生後満7日未満の期間を『周産期』といいます。周産期は、母体や胎児、新生児の命に関わるさまざまなトラブルが生じやすく、突発的な事態に備えなくてはいけません。虐待についても周産期から、場合によってはその前から、産科医、小児科医、医療スタッフが連携して対応する必要があります」

 -虐待を防ぐ手だては。

 「虐待につながるリスク要因の評価が重要です。保護者、子ども、養育環境のそれぞれにリスク要因があるかどうかを把握することです。要因が複数あると、リスクは上がります。ケースによっては、特定妊婦や要支援児童として対応する必要があります」

 -特定妊婦とは。

 「出産後の子どもの養育について出産前から支援することが特に必要な妊婦のことです。家庭環境にリスクを抱え、育児が困難と予想される妊婦が認定されます。若年や望まない妊娠、妊婦健康診査を受診しない妊婦も含まれます」

 -保護者側のリスク要因とは何でしょうか。

 「望まない妊娠で妊娠そのものを受け入れられない、生まれた子どもに愛情を持てない、産後うつなどで心身が不安定、保護者自身が虐待を受けた経験がある-などです。これらには、子どもとの愛着形成を支援する、公的・民間の地域サポートにつなぐ、精神科と連携するといった対応があります」

 -子どもの側のリスク要因は。

 「乳児期に手がかかる、未熟児、障害児、何らかの育てにくさがあるなどです。専門医による診断と治療、アドバイスして、フォローしながら地域のかかりつけ医、保健師などにつなぐ必要があります」

 -養育環境のリスク要因とは。

 「家族や住む場所が変わるなど生活環境が安定しない、夫婦の不和やDV(配偶者への暴力)が起こっている、親類や地域と関わりを持たず孤立している、経済的に行き詰まっている、母子ともに必要な定期健診を受けていない-といった場合です。これらも家庭環境などを調査し、公的・民間の支援や相談につなぐ、医療的なフォローをする、かかりつけ医と連携するなどの対応が必要です」

 「虐待のリスクが生じないか、妊娠中から予想して対応することが重要です。小児科医による訪問・面談や精神科医が関わることが求められます」

(2019年3月13日付 熊本日日新聞夕刊掲載)