【MLB】「彼は本当に良い父親」―アジア人歴代1位の通算189本塁打、秋信守の家族愛

レンジャーズ・秋信守【写真:Getty Images】

2人の息子がクラブハウスでボランティア「子供たちに教えてるんだ」

 メジャーリーグのクラブハウスには、選手の家族が遊びに来ることがよくある。ほかの選手たちも、自分たちの子供同士を遊ばせたり、時には選手自身も一緒になってリラックスすることも多い。レンジャーズの韓国人外野手、秋信守(チュ・シンス)もその一人のようだ。MLB公式サイトは「秋はスプリングトレーニングを子供たちと楽しんでいる」と題して、秋信守の2人の息子がクラブハウスでチームと過ごしていることについて特集した。

 秋は韓国プロ野球を経験することなく、2005年にマリナーズでメジャーデビュー。コンスタントに20本塁打を記録する長打力と2桁盗塁を記録する走力で、高いパフォーマンスを発揮してきた。最大の武器は選球眼で、通算打率.276に対し出塁率は.378を記録、777四球は現役でも10位にランクインしている。また、通算189本塁打は松井秀喜氏(175本)を上回り、アジア人歴代1位だ。レンジャーズ移籍後は成績を落としていたが、昨季は特に前半戦が絶好調で、初のオールスターにも選出された。36歳を迎える今年も、リーディングヒッターとして期待されている。

 そんな秋だが、今季のスプリングトレーニングでは14歳を迎えるアラン君と9歳のエイデン君の2人の息子をクラブハウスに招き、同じ時間を過ごしているようだ。そして、単に一緒に過ごしたいという思いだけでなく、クラブハウスを通じて彼らに様々なことを学んでほしいと特集では語っている。

 息子たちは、クラブハウスでゴミ出しや洗濯の手伝いなど、あらゆることを行っているそうだ。記事では、子供たちにお金をあげるだけでなく、父親として毎日何かを学んでほしいという秋のコメントを紹介。「子どもたちにこう教えているんだ。ここに来たら、(雑用などを行う)クラビーたちが、どれだけのことをしているのか見てほしい」。

「エイドリアンは家族のために引退する……。僕も考えるよ」

 遊撃手のエルビス・アンドラスは、「彼は厳しく見えるだろうけど、本当に良い父親だ」と父親としての秋を絶賛。子供たちも本当にいい子たちだ、と秋一家に太鼓判を押している。

 韓国の高校を卒業後、自国のプロ野球を経ずにマイナー契約からMLBに飛び込んだ秋。メジャー定着を果たす2008年までの7年半の大部分をマイナーで過ごしている。そのため、華やかな部分が注目を浴びやすいメジャーの舞台だけでなく、マイナーの過酷な環境を子供たちに知ってほしいという。

 秋は、マイナーリーグには多くの才能ある選手がいるが、その多くがメジャーの舞台に上がることはできないと言っている。そして、その理由について「精神面が重要なんだ」と答えた。このことは、8年生のフットボール選手である息子のアランが学ばなければならないことでもあるとしている。記事の中で「(競技を)辞めさせたくはない」と語っている秋。アランを心配しつつも、今までも大きなプレッシャーを受けてきた経験から「なんだって大丈夫だ」とも語っている。子供たちにとって、頼りがいのある父親のようだ。

 昨季限りで引退したエイドリアン・ベルトレは、チームリーダーとしてレンジャーズを引っ張ってきた。36歳を迎え、引退もそう遠くない秋にベルトレの決断は大きな影響を与えたようで、「エイドリアンは家族のために引退する……。僕も考えるよ」と記事の中で語っている。

 長いシーズンを家から出て戦う野球選手にとって、家族と共有できる時間は少ない。「なるべくいい思い出を作りたいんだ」と語る秋は、自分が可能な限り野球選手でありたいとしながらも、同時に子供たちとも過ごしたいと記事に告白している。

 充実したスプリングトレーニングを過ごしている秋。野球選手として働く年数はもう多くはないが、15年目、家族と野球を愛する男の挑戦が始まろうとしている。(Full-Count編集部)

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