迫る 県議選 平成最後の戦い・2 佐世保市・北松浦郡区(定数9) 元衆院議員参戦で混沌

 「紆余(うよ)曲折あったが、原点に立ち返る。ともに頑張りましょう」。佐世保市議選に出る国民民主の現職が10日に開いた決起集会。応援弁士で登壇した元衆院議員の宮島大典はこう呼び掛けた。
 昨年9月に国民の県議、久野哲から後継の打診を受けたが、返事を保留。幅広い支持を得るため無所属での出馬を決意した。そこには「将来の市長選挑戦」という思惑があった。
 しかし民主党時代から宮島の国政選挙を支えた国民民主党県連は猛反発した。県議会では国民と社民でつくる会派「改革21」に入ることを約束して収拾。支持母体の連合長崎なども推薦を決めた。ただ、国民関係者からは「久野の後継者とは言えず、力が入らない」と感情的なしこりは残る。
 元国会議員のくら替えに、他陣営は「知名度は抜群だ」と口をそろえて警戒する。久野とともに国民の現有2議席を守る山田朋子は「支援者がかぶる」と困惑。協力労組の数を増やしたほか、参院選の党公認に内定した佐世保市出身候補とも連動する。
 社民の堤典子は、引退する党県連代表の吉村庄二から引き継ぐ地盤が一部重複する。出身の県教組や地元の世知原町などで票の上積みを狙う。
 宮島の影響はかつて在籍した自民にも及ぶ可能性がある。公認を受けた6人のうちの1人は「保守票も狙われる。7人目の自民候補だ」と競争の激化を予測する。
 加えて、二つに分裂した自民系会派の勢力争いも垣間見える。その“一端”とみられるのが山下博史の初参戦。地元の有力建設会社を中心に「無党派層を取り込む」と鼻息は荒い。
 企業や経済団体が下支えをする戦略が山下と重なるとみて、外間雅広も新たな票の掘り起こしに注力する。ただ、山下は外間と同じ第2会派「自民」に属するとみられ、「最後は2人に近い国会議員がうまく調整するのではないか」とある自民関係者は読む。
 こうした背景から、もう一つの最大会派「自民・県民会議」の現職も危機感は強い。今期議長を経験した田中愛国は足場の市南部で票固めを徹底。市北部を軸に漁業者やカトリック票に支えられる議長の溝口芙美雄は組織の引き締めを図る。旧北松地区の吉村洋は地元の保守系市議との連携を強化。当選12回を誇る宮内雪夫は後援会を基盤に経験と実績をアピールする。
 このほか、前回トップ当選した公明の宮本法広は創価学会票をベースに得票数の上乗せを目指す。共産は新人の安江綾子を擁立し、反保守勢力の受け皿として浸透を急ぐ。
 どの陣営も宮島の動きを意識した選挙戦となりそうだが、けん制する声もある。「どっちつかずの姿勢で、広く浅く知られていても票にはならない。そんなに県議選は甘くない」。票の流れは複雑化し、情勢は混沌(こんとん)としている。

◎立候補予定者

▼佐世保市・北松浦郡区
宮内 雪夫 85 自現(12)
田中 愛国 74 自現(6)
溝口芙美雄 71 自現(4)
外間 雅広 60 自現(3)
吉村  洋 62 自現(2)
山下 博史 44 自新
山田 朋子 46 国現(3)
宮本 法広 46 公現(1)
安江 綾子 42 共新
堤  典子 61 社新
宮島 大典 55 無元(1)

 【おことわり】立候補予定者名簿の政党は衆院勢力順(自民=自、立民=立、国民=国、公明=公、共産=共、社民=社、無所属=無)。同じ政党内は現職、元職、新人の順で、当選回数(丸数字)ごとに五十音順。

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