学生時代からの年下彼女・清瀬まちとドライブデート
ある休日。人気のデートスポットで彼女とドライブを楽しむ男は松田道雄。30歳。愛車はロードスターだ。
松田は同車を数台乗り継いできたが、実はこの歴代の愛車であるロードスターは、オーナーの松田とだけ話をすることができる不思議なクルマであった。
一方、長く付き合っている彼女とは、仲間たちから「早くゴールきめちゃえよ!」と囃し立てられるような状態である。何ごとも長く続くことはいいことなのか。それともよくないことなのか。迷えるアラサー男、松田道雄は、愛車からその解答を得ることになる。
(この物語はフィクションです)
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清瀬まち。彼女とは学生時代からの付き合いだ。
当時は、自分がサッカー部のレギュラーで彼女はマネージャー、そして先輩と後輩という、まあ、よくある間柄だった。
ある日、2学年下の彼女から部室の裏手へ呼びだされ、突然告白されたのだ。一点の曇りもない真っ直ぐな眼差しで俺のことを見ながら、はっきり好きだという思いを伝えてきた。それ以外のことはよく覚えてない。
まち:「ねえねえ、みっちゃん、ネットで『30歳』って検索したことある? みっちゃんの今の歳って、足利義輝が死んだ年齢なんだよ」
松田:「ん、足利……なんて?」
まち:「あれ、分かりにくい? そっか、みっちゃん日本史苦手だったもんね。足利13代将軍じゃちょっとイメージが遠いよな〜」
松田:「いや、そういうことじゃなくて」
まち:「よしっ、それなら吉田松陰だ! なんとあの吉田松陰の没年も、今のみっちゃんと同い年なんだぜっ」
ロードスター:「おい道雄、まちはいっつもこの調子だな。けど、こういうところが可愛いよな。可愛いけど若干ウザい、ウザ可愛いってか。ハハハハ」
松田:(ロードスター、言っとくけどお前も結構ウザめだから)
まちとはすでに12年近く付き合っている。ロードスターも中古で買った初代モデルからすでに4台目だ。俺の彼女と愛車は、こんな感じでいつだってマイペースなのだ。俺が大学に進学しても、就職しても、なにも状況は変わっていない。そう、変化がない。
長いこと一緒にいる理由(ワケ)
まち:「そういえばさ、みっちゃんて、なんでいつも同じクルマに乗り換えるの?」
松田:「ほかに欲しいクルマがないってのもあるけど、ひと言でいえば、このロードスターの変わらないスタイルが好きなんだ。綺麗な形だろ?」
ロードスター:「おう、ありがとな相棒。全体的にはFRらしい端正なバランスだし、スポーツカーなのにかっこつけ過ぎてないし、ホントにオレって上品なクルマだよな」
まち:「あー、それって私にも言えるよね。このカモシカのような美しいスタイルを見よ! なんちて(笑)」
松田:(まったくどっちをみても、よくそういうことを恥ずかしげもなく言えるもんだよな)
だが本当に、彼女のまちはあの頃から変わらず美しい……と思う。いや、周囲の人たちはそう言ってくれている。
良くも悪くも鈍感な大人になってしまった俺には、あまりにも長いこと一緒にいるせいで、いまやその凛とした顔立ちも、スリムで長く伸びた肢体も心に響いてこないのだ。
まち:「けどさ、今回選んだこの白のボディカラーはすごくいいね!」
松田:「わかってるじゃん。このブラックメタリックのホイールとピアノブラックのドアミラーが、純白のボディカラーによく映えるだろ?」
ロードスター:「以前のホイールはガンメタ塗装だったからな。このブラックメタリック塗装のホイールは、最新モデルならではの仕様なんだぜ!」
まち:「そう、ベストまっち。だから私、今日はお揃いの服装選んできたんだよ〜ん♪ なんだか海に行きたいな~」
この組み合わせは、きっと最強なんだと思う。
いや、ロードスターのホワイトボディにブラックのアクセントもいいものだけれど、俺が最強と思っているのは、“オープンカーとまち”という組み合わせだ。
屋根をオープンにして街中を走っていると、たいていの男たちは羨望の眼差しでこちらを見てくる。特に、いかにもカーマニアっぽい男の目なんて、まるで世界に20人しかいないF1レーサーを眺めているかのようだ。嬉しいような気もするし、怖いような気もする(笑)。
あの頃と変わらない、一点の曇りもない真っ直ぐな眼差し
まちは最近、料理にはまっている。
「お豆腐だ〜い好き!」などと言いながら、オーガニック食材ばかりの色の薄い手料理をたまに作ってくれるのだが、味も薄い。
ただ、それはまったく不満じゃなくて、高校時代はオリーブオイルの存在さえ知らなかった彼女のことを思うと、成長を感じる。そしてその変化は、すごく自然なものなのだ。毎朝、起きたらまず顔を洗うことのように。
まち:「え、私が料理の修行をしてる理由? そんなの、みっちゃんに食べて欲しいからに決まってるじゃん」
松田:「ありがとう。けど、おかげで最近下腹が出てきた(笑)」
ロードスター:「おい道雄、オレだって進化してんぞ。運転支援システムの『i-ACTIVSENSE』が搭載されて、自動ブレーキや車線逸脱警報、AT誤発進抑制制御まで付いたんだ。そんなのぉ、みっちゃんにぃ、安全に走ってほしいからに決まってるじゃぁん」
松田:(ありがとう。けど、お前はウザい)
そうなのだ。俺が昨年買い替えたこの最新型ロードスターは、見た目はほとんど変わらないのに、安全装備が強化され、エンジンの環境性能や燃費性能も向上した。また、ステアリングのテレスコ装着は、歴代ロードスターで初めてだ。正しいドライビングポジションで運転することは乗員の安全につながる。
一方の俺は、このクルマを選んで12年経つが、いまだにヒール・アンド・トゥすらできない。クルマだけじゃない。彼女のためにも、なにか進化したり、なにかしてあげようとしたことがあっただろうか。
人のために行動できる人と行動できない人。世界はこの二つに大別されると思う。俺が第一志望の大学に落ちた時、まちはものまねを習得したとか言って、似てない和田アキ子のまねを延々と繰り返していた。俺が笑うまでずっと。
長く一緒にいすぎたことで、デートすることも、キスすることも、いつのまにか挨拶みたいなものだと思っていた。それなのに、まちはいつだって俺のことを一生懸命好きでいてくれる。ロードスターみたいに非力なエンジンで懸命に走ってきたのだ。
そんなことを考えながら運転していたら、助手席のまちは、あの頃と変わらない、一点の曇りもない真っ直ぐな眼差しで俺のことを見ていた。
まち:「みっちゃん、どうしたの?元気ないね。今日はずっとどこか上の空じゃん??」
松田:「なあ、まち・・。」
まち:「やっぱり、具合でも悪い?」
松田:「・・ゴール・・・決めよっか」
ロードスター:(お前っ、それってっ!?)
まち:「ん、みっちゃん何言っているの??」
松田:「なんかシュート打ちたくなったんだよね」
まち:「はい??」
ロードスターは、「世界で最も多く生産された2人乗りの小型オープンスポーツカー」としてギネス記録に認定されているという。俺も、ギネス記録に認定されるほどは無理だけど、これからもできるだけ長く、まちと一緒にいたい。
[Text:安藤 修也/Photo:小林 岳夫/Model:清瀬 まち]
Bonus track
清瀬 まち(Machi Kiyose)
1991年3月23日生まれ(27歳) 血液型:B型
出身地:岡山県
日本レースクイーン大賞2016 グランプリ受賞
SUPER GT LEXUS TEAM SARD 2019 KOBELCO GIRLS
SUPER GT LEXUS TEAM SaRD 2018 SaRDイメージガール
SUPER GT エヴァンゲリオンレーシング2017
2018 RIZINガール