現役では巨人丸が傑出、歴代では王1位&清原2位…四死球による出塁率「IsoD」

現役時代にあらゆる打撃部門で圧倒的な成績を残した王貞治氏【写真:Getty Images】

純粋に四死球だけで出塁した率、投手が警戒する強打者の指標

 打者の選球眼を表す指標IsoD(Isolated Discipline)は、出塁率から打率を引いたセイバーメトリクス系の数値だ。純粋に四死球だけで出塁した率を表している。

 四死球は地味な数字だが、出塁という点では安打と同等の価値があるとされる。MLBでは、辛抱強く四球を選ぶ打者は高く評価される。また、強打者は投手に警戒されて敬遠四球が増える。敬遠にならなくても、きわどいところを突くことで四球も増える。IsoDは、投手が警戒する強打者の指標でもある。

◯2018年、セ・パ両リーグのIsoD5傑(規定打席以上・所属は昨年)

パ・リーグ
1 山川穂高(西).115/打率.281出塁率.396
2 西川遥輝(日).113/打率.278出塁率.391
3 近藤健介(日).105/打率.323出塁率.427
4 デスパイネ(ソ).094/打率.238出塁率.333
5 森友哉(西).091/打率.275出塁率.366

セ・リーグ
1 丸佳浩(広).163/打率.306出塁率.468
2 鈴木誠也(広).119/打率.320出塁率.438
3 山田哲人(ヤ).117/打率.315出塁率.432
4 糸井嘉男(神).113/打率.308出塁率.420
5 福留孝介(神).109/打率.280出塁率.389

 両リーグを代表する打者が並んでいる。

 今年から巨人に移籍する丸のIsoDは傑出している。単に打つだけではなく、なかなかアウトにならない。相手投手にとって難敵中の難敵だ。丸の同じリーグへの移籍は、セ・リーグの地図を変える大きな出来事であることがこれでもわかる。ソフトバンクのデスパイネは打率.238で25位だが、IsoDは.094で5位。貢献度は高い。なお、2018年の平均IsoDは、パが.071、セが.072だった。

歴代ランキングは王、清原、落合、松井と強打者が並ぶ

◯NPB歴代IsoD10傑 4000打数以上()は実働期間

1 王貞治 .145/打率.301出塁率.446(1959-1980)
2 清原和博 .117/打率.272出塁率.389(1986-2008)
3 落合博満 .112/打率.311出塁率.422(1979-1998)
4 松井秀喜 .109/打率.304出塁率.413(1993-2002)
5 呉昌征 .107/打率.272出塁率.379(1937-1957)
6 江藤智 .1019/打率.268出塁率.370(1990-2009)
7 白石勝巳 .1017/打率.256出塁率.358(1936-1956)
8 田淵幸一 .101/打率.260出塁率.361(1969-1984)
9 藤井康雄 .1004/打率.252出塁率.353(1987-2002)
10 千葉茂 .0997/打率.284出塁率.384(1938-1956)

 ほとんどの「強打の指標」でトップに来る王貞治に続いて、清原が2位。昭和末から平成にかけて、恐れられた打者だったことがわかる。清原はNPB最多の196死球。これもIsoDを押し上げることにつながっている。

 呉昌征は映画「KANO」で知られる台湾、嘉義農林出身。戦前、投打で活躍。選球眼の良い名リードオフマンだった。9位の藤井康雄は、イチローなどとともにオリックスの打線を担った強打者。通算282本塁打。打率は.252に過ぎないが、選球眼は非常に優秀だった。

◯現役IsoD10傑 4000打数以上

1 福留孝介(神).0929/打率.293出塁率.385(1999-2018)
2 糸井嘉男(神).0927/打率.301出塁率.394(2007-2018)
3 鳥谷敬(神).090/打率.281出塁率.371(2004-2018)
4 中村剛也(西).0894/打率.253出塁率.343(2003-2018)
5 栗山巧(西).0890/打率.285出塁率.374(2004-2018)
6 阿部慎之助(巨).083/打率.283出塁率.367(2001-2018)
7 青木宣親(ヤ).074/打率.329出塁率.403(2004-2018)
8 秋山翔吾(西).0733/打率.300出塁率.373(2011-2018)
9 田中賢介(日).0728/打率.283出塁率.355(2000-2018)
10 中島宏之(巨).070/打率.296出塁率.366(2002-2018)

 上位には阪神勢と西武勢が並んでいる。福留、糸井は長打も多い強打者だが、鳥谷は138本塁打とそれほど本塁打は多くない。しかし非常に選球眼が良く、現役最多の1034四球を選んでいる。西武の中村は打率.253だが、本塁打王6度の強打者であり、投手の警戒心が強く、高いIsoDを誇っている。

 こうしたランキングを見るとIsoDは、打者の隠れた貢献度を表す数値であることがわかる。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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