C・イーストウッドの集大成『運び屋』が“最高傑作”といわれる5つの理由── 作品の魅力を徹底検証

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全米で1億ドルを突破した映画『運び屋』が待望の日本公開を迎え“大絶賛”の声が続出。様々な反響を巻き起こす、クリント・イーストウッド史上最高傑作と言われている“5つの理由”、そしてレジェンドが描きたかった物語とは?

監督としては50年近く、俳優としては60余年のキャリアを誇る巨匠イーストウッド。そんな彼が監督・主演を務めた集大成『運び屋』。全米で公開されると監督史上6作目の興収1億ドル突破、3月8日(金)に日本公開となり、同じく監督・主演作『グラン・トリノ』を越え、13億円の興行収入を狙える大ヒットスタートとなった。マスコミ、批評家から絶賛の声が続出した『運び屋』が公開されると、イーストウッドの“最高傑作”と評価する一般の声も続々発信されている。

今回、『運び屋』が“最高傑作”と評価される“5つの理由”を徹底検証してみた!

【理由 其の1:イーストウッドの集大成となる自然体の演技】

イーストウッドはこれまで様々な役を演じてきた。『許されざる者』(1993)では、かつて列車強盗や保安官殺しで名を馳せた悪党であり、今は隠遁生活をおくる初老のガンマン、ウィリアム・マニーに扮して正義のために立ち上がる姿を熱演。『グラン・トリノ』(2009)では、妻を失い孤独に暮らす頑固な退役軍人コワルスキーが、予期せぬ友と出会い、変わっていく姿をタフな男の強い意志を込めて演じ、誰にも真似のできないいぶし銀の演技で大ヒットに導いた。

特に演技が高く評価された『グラン・トリノ』の後、「今のハリウッドには自分が演じられる作品がない」と、俳優引退と衝撃の発言をしていた俳優イーストウッドを本気にさせたのは、90歳の運び屋の物語だった。演じるのはこれまで仕事優先で家族をないがしろにして生きてきたアール・ストーン。大量のドラッグを運んでいるにもかかわらず、気ままに寄り道したり運転したり、マフィアにも物怖じしない自由奔放でユーモアに溢れた愛すべきキャラクターだ。そんなアールが運び屋の仕事を通して家族との絆を取り戻そうとする姿は、人生を生き抜くヒントを与えてくれる。まさに、俳優イーストウッドの集大成となる自然体の演技がここにある。

【理由 其の2:誰も予想できない前代未聞の実話】

イーストウッドもほれ込んだ90歳の運び屋の物語は、ニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された実際の記事が題材となっている。ひょんなことから高齢の白人がドラッグの運び屋となったのか?なぜ、大量のドラッグを運ぶ凄腕として巨大麻薬組織からも一目置かれるようになったのか?麻薬取締局による捜査によって、運び屋はどんな運命を迎えることになるのか?

イーストウッドはこれまで、イラク戦争で米軍史上最多の160人を射殺した「伝説の狙撃手」クリス・カイルの半生を描いた『アメリカン・スナイパー』(2015)や、奇跡的な生還劇として知られる実際の航空機不時着事故を題材に、155人もの命を救いながらも、一転容疑者とされた飛行機機長をめぐる『ハドソン川の奇跡』(2016)などの実話を描いてきた。

『運び屋』では、麻薬捜査官が運び屋を徐々に追い詰めていく姿や巨大麻薬組織のマフィアたちの抗争が並行して描かれ、誰も予想だにしなかった衝撃の結末が描かれる実話サスペンスなのだ。

【理由 其の3:超豪華キャストの共演】

監督・主演を務める巨匠を支えるのは、運び屋を取り巻く人々を演じた豪華キャストの面々だ。『アメリカン・スナイパー』で主演を務めたブラッドリー・クーパーは、上昇志向で、実は共通点のある運び屋の話に耳を傾ける存在、敏腕捜査官ベイツを演じる。ベイツのアシスタントとして活躍するトレビノ捜査官には、『ミリオンダラー・ベイビー』(2005)に出演した名脇役マイケル・ペーニャ、主任捜査官役で厳格な演技を見せた『ミスティック・リバー』(2004)でタッグを組んだローレンス・フィッシュバーンと、イーストウッド組の名優が名を連ねる。

さらには『ゴッドファーザー PARTⅢ』でアカデミー賞にノミネートされたアンディ・ガルシアが貫禄たっぷりの演技で巨大麻薬組織のボスラトンに、アカデミー助演女優賞を2度受賞経験のあるダイアン・ウィーストが、アールの妻メアリーを演じている。家族をないがしろにした夫に罵詈雑言を浴びせるなど様々な感情を滲ませる、ウィーストのチャーミングな演技にも注目だ。これらの豪華アンサンブル・キャストにより、さらに味わい深いドラマが生まれたのだ。

【理由 其の4:まるでイーストウッドの実人生を投下した映画?】

俳優イーストウッド復活のきっかけを作ったのは、『グラン・トリノ』の名脚本家ニック・シェンクだ。ニューヨーク〜の記事にインスパイアされたシェンクは、主人公にイーストウッドをイメージして執筆した。脚本を読んだイーストウッドは「私の年齢の設定で展開させてみると楽しいだろうなと思ったんだよ。私はいつも観察しているし、学ぼうとしていると思いたい」と自身が演じることを考えたと語る。

アールは自身の老いを気にすることなく新しいことを取り入れようとし、どこまでもマイペースな性格。強面のマフィアたちにも物怖じせずに話しかけ、たちまち仲良くなってしまう “愛されキャラ”だ。90歳の運び屋レオ・シャープの自由奔放に生きる姿や学び続ける姿勢がイーストウッドの生き方と重なり、アールという主人公が完成したのだ。

この人物像には、イーストウッドの実人生を投影したかのような生き様が描かれており、12年間も口を聞かない絶交中の娘を実の娘アリソン・イーストウッドが演じている。彼女は、親子関係がギクシャクし「父とはうまくいってなかった」という過去の経験を演技に活かしたという。

【理由 其の5:イーストウッドの最高傑作は、“あなた”のための映画である】

そして、イーストウッド作品すべてに共通している“すべての人に捧げられた映画”だということだ。『グラン・トリノ』の主人公コワルスキーと『運び屋』のアールを比較すると、退役軍人で孤独に暮らす老人という共通点がある。

彼らは「グレイテスト・ジェネレーション」と呼ばれ、第二次世界大戦後現代のアメリカの基礎を築いた世代だとされる。彼らは家族と国のために仕事を最優先し、その代償に家族をないがしろにしてしまった世代でもある。アールは家族とのつながりを取り戻すために運び屋の仕事を始める。その仕事の過程で“本当に大切なこと”を学ぶことになる。「学ぶことに年齢は関係がない」というイーストウッドのメッセージが込められている。

この思いは、敏腕捜査官ベイツとアールがダイナーで交わす会話にもさりげなく盛り込まれており、その先に“家族”というテーマが浮かび上がらせる。運び屋の仕事で得たお金を孫娘の結婚式の費用に充てたり、今まではしてこなかった家族と過ごす時間を優先したりと、主人公から家族に対しての「贖罪」も描かれている。このように、『運び屋』は今を生きるすべての人たちに捧げられた普遍的な物語であり、映画に人生を捧げたイーストウッドの見事な演出と、硬軟織り交ぜた集大成となる演技によって生まれた“最高傑作”なのである。

映画『運び屋』は大ヒット公開中

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