水素水の評価は…ミトコンドリアを若返らせる方法はあるか

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「抗酸化力」は年齢とともに減少/(C)日刊ゲンダイ

【人生100年時代の健康法】

ヒトの体は37兆個の細胞で構成されています。その細胞一つ一つに「ミトコンドリア」と呼ばれる数百から数千のエネルギー工場があります。活性酸素は主にそこでつくられます。そのため酸化の影響をもっとも受けやすいのもミトコンドリアです。しかも細胞膜と同じように、不飽和脂肪酸をたっぷり含んだ脂質膜で覆われているのです。そこでミトコンドリアの内外には、活性酸素を無力化する「抗酸化酵素」が豊富に配備されています。

抗酸化酵素の量、つまり「抗酸化力」は、成長とともに増え、20歳前後でピークに達します。しかし、それ以降は年齢とともに減少していきます。それに伴ってミトコンドリアの劣化が進み、体力や基礎代謝の低下という形で表れてくるのです。多くの人が30歳を過ぎるころから太り始めるのも、ミトコンドリアの劣化が原因のひとつです。また高齢者のサルコやフレイルも、同様の理由で進行すると考えられています。

そのため最近では「ミトコンドリア活」などといった話も出てきています。適度な運動でミトコンドリアが活性化できるとか、鍼やお灸が効くとか、根拠の薄い話がネットや健康雑誌などに散乱しています。

その中のひとつに「水素水」があります。もともとは「ミトコンドリア病」などの治療のために、10年以上も前に考案されました。ミトコンドリアの働きが落ちることにより、筋力低下や脳の発達障害などが起こる難病です。ほかにも活性酸素が関与すると考えられる病気の治療にも期待されていました。活性酸素を水素と反応させて水に変え、その毒性を中和しようというわけです。それによってミトコンドリアの劣化が止まり、病気が改善されると期待されたのです。

しかし、いまでは「ほとんど効果はない」という評価になっています。病気の改善にも抗酸化力の強化にも、ほとんど影響しないようです。ところが日本では意外と人気で、いまではアルミのボトル(ペットボトルでは水素が逃げてしまうため)がコンビニなどで普通に売られています。微量の水素ガスを水に溶かしただけのものですが、結構いい値段がついています。

おそらく無害ですが、なにかを期待して買ってもお金の無駄でしょう。ミトコンドリアを若返らせる確実な方法は、まだ見つかっていないのです。

(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)