「熊本地震の教訓、未来に残す」 熊本市、震災文書を保存へ

©株式会社熊本日日新聞社

熊本地震関連の公文書が入った段ボールがずらりと並ぶ旧NHK熊本放送会館。復旧・復興が進むにつれ、公文書は今後も増えていくという=熊本市中央区

 熊本市は、熊本地震の復旧・復興に関する公文書(震災関連文書)は「地震の教訓を未来へ残すための重要な資産」として廃棄せず、10年間は全て保存することを検討している。その後、残すべき文書を選別する考えだ。そのための経費や場所の確保には課題もあるが、識者は「災害の全容を知る基礎資料となる公文書を残すのは被災自治体の責務」と指摘している。

 同市中央区の旧NHK熊本放送会館3階。約380平方メートルある一室にはA4用紙なら4700枚入る文書保存箱がずらりと並ぶ。被災家屋の公費解体申請書や公共施設の復旧工事関連の文書などが入っており、その数は約2500。「ほとんどが熊本地震が発生した2016年度分」と市総務課の担当者。

 こうした震災関連文書は、内規で定める担当部局での保管期間が過ぎ、公文書管理を所管する総務課が引き取った。進行中の事業は担当部局に置かれているため、復旧・復興が進むに連れて、さらに増えていく見込みだ。

 市は地震翌年の17年7月、全部局に震災関連文書を廃棄しないよう指示した。歴史的価値がある文書が含まれていると考えたからだ。

 それを今後どう扱っていくのか、有識者による委員会で検討している段階だ。市は「今慌てて選別し、廃棄しては取り返しがつかない」と10年間はすべて保存し、その後精査する方針だ。

 だが、そのための課題もある。一つは保存スペースの確保だ。

 震災関連文書のため、無料で借りているNHK放送会館が使えるのは21年4月まで。本庁舎地下1階には公文書の保管庫(約515平方メートル)があるが、既にほぼ9割以上のスペースが埋まっており、いずれ別の保管場所の確保を迫られる。

 11年の東日本大震災で被災した仙台市は公文書館を新たに設ける予定。設計費だけで1700万円かけて小学校の旧校舎を大規模改修するが、「相当な事業費は必要」という。

 文書の整理も簡単ではない。神戸市が震災関連文書の整理に着手できたのは阪神大震災から15年後。写真のネガフィルムをデジタル化したり、紙文書に目録を付けて分類したりし、すべての文書の整理を終えたのは18年3月。約8年の歳月と約1億6千万円かかった。こうした作業に携わった神戸市文書館の杉本和夫さん(69)は「整理はすべて手作業。時間と経費がかかった」と振り返る。

 熊本市の場合、公文書管理のルールは内規のみ。今後は条例制定も検討する必要がある。

 市には、1889(明治22)年に熊本を襲った地震の公文書は残っていなかった。「経緯は不明のままだが、今回は後世に残さないといけない」と市総務課。

 神戸大の佐々木和子特命准教授(災害資料学)は「熊本地震の公文書は、ほかの地域や熊本市の未来における災害対応に役に立つ。調べやすい公開の仕組みも考えるべきだ」と市に注文する。(高橋俊啓)