【高校野球】初戦で履正社-星稜、明豊-横浜…組み合わせ決定の選抜、大会の見どころは?

星稜・奥川恭伸【写真:沢井史】

初戦の注目は星稜-履正社と横浜-明豊、奥川と及川はプロ注目の投手

 23日に開幕する第91回選抜高校野球大会の組み合わせ抽選会が15日、大阪市内で行われ、全32校の対戦カードが決まった。開幕戦は呉(広島)-市和歌山(和歌山)の公立校同士のカード。ちなみに呉は2年前に出場した選抜でも開幕戦を戦っている(至学館に6-5で勝利)。

 まず、全体的に見ると昨秋の地区大会優勝校が各ブロックにばらけた印象がある。例年では初戦で地区大会優勝校同士の対戦カードが2、3カード生まれているが、今年は広陵(中国大会優勝)と八戸学院光星(東北大会優勝)のみだ。そんな中、初戦の好カードをまず挙げるとすると、Aブロックの1日目第3試合・履正社(大阪)-星稜(石川)になるだろう。

 星稜は昨秋の明治神宮大会準優勝校で、何と言っても最速150キロ右腕・奥川恭伸が大黒柱。昨秋の公式戦では60回1/3を投げ、奪三振は82で、7失点、5四死球。防御率は0.60と、どの数字を取っても完璧と言えるような成績を残した。課題だった攻撃力を上げるために冬場は徹底的にバットを振り込んだが、その成果がどう出るか。昨秋はケガの影響で思うように振れなかった山瀬慎之助のバットから快音が響くようになったのは好材料だ。

 だが、攻撃面を見ると履正社が1歩リードしている。4番の井上広大はプロ注目の長距離打者で、昨秋から体重が6キロ増え、飛距離がアップ。3月8日に解禁された練習試合でもすでに3本塁打を放っており、奥川との対決に注目が集まる。その他、1年からレギュラーの3番の小深田大地、昨秋5割近い打率を残した池田凜など巧打者がずらりと並ぶ。

 心配なのが先週の練習試合で利き手の左手指に打球を受けたエース左腕・清水大成の復調具合だ。患部は打撲と診断され、13日からキャッチボールを開始。回復の一途をたどってはいるが、この1週間でどこまで本調子に近づいていけるか。清水は最速145キロの速球を持ち、スライダー、カットボールなどを駆使。昨秋の近畿大会の準々決勝・福知山成美戦のようにストライクをテンポ良く投げ切れば、星稜打線も打ちあぐねることになるだろう。

 続いてBブロックでは明豊(大分)と横浜(神奈川)が激突する。明豊はチーム打率が出場校中3位。1年生が多く若いチームではあるが、それを全く感じさせない力強いスイングを見せる。特に3番・布施心海、4番・野辺優汰だけで昨秋は計29打点を挙げており、打線に切れ目がない。

 相対するのは横浜の注目の153キロ左腕・及川雅貴。鋭く曲がるスライダーとのコンビネーションは絶妙で、奪三振率12.85は出場校の投手の中でトップの数字だ。1番の小泉龍之介、3番の度会隆輝らポテンシャルの高い打者も揃い、明豊の1年生左腕・若杉晟汰に対し、どんな打撃を披露するのか見ものだ。

 同じブロックには昨秋の明治神宮大会を制した札幌大谷(北海道)や近畿王者の龍谷大平安(京都)もいる。札幌大谷はエースの右の本格派・西原健太、右横手投げの太田流星ら投手力が充実。龍谷大平安は野澤秀伍、豊田祐輔のダブル左腕が切磋琢磨しながら成長しており、昨夏の甲子園を経験する4番の水谷祥平、5番の奥村真大らの打棒にも注目したい。

広陵-八戸学院光星も見応えあり、智弁和歌山は中谷監督が甲子園初采配

 Cブロックの広陵(広島)-八戸学院光星(青森)の対決も見応えがありそうだ。広陵は最速148キロ右腕・河野佳の他に石原勇輝、森勝哉の左腕2枚看板もおり投手層は厚い。4番の中村楓大は高校通算20本塁打を数える右のスラッガーで、昨秋はチームトップの14打点を挙げるなど攻撃の要だ。八戸学院光星は巧打者の3番・武岡龍世を筆頭に4割打者が並び、広陵の投手陣をどう攻略していくか。

 九州王者の筑陽学園(福岡)は西舘昂汰、西雄大の右腕2本柱、左腕の菅井一輝との継投がカギとなる。打率4割超えの5番・江原佑哉、長打力のある6番・福岡大真と攻撃の柱がしっかりしており、上位進出の可能性は十分にある。平成最初の甲子園王者・東邦(愛知)は二刀流・石川昂弥が投打でどんなパフォーマンスを披露するか。左腕の植田結喜も冬を越えて成長し、石川の負担をできるだけ軽減したい。主砲の熊田任洋は勝負強さと小技も兼ね備える注目の打者だ。

 山梨学院(山梨)は“山梨のデスパイネ”こと高校通算34本塁打の4番・野村健太がパワフルな打撃を見せつけている。昨夏の甲子園ではホームランも放った強打者で、野村の前にどれだけ走者を置けるかもポイントだ。

 Dブロックは明石商(兵庫)の戦いぶりに注目だ。1年生エース・中森俊介、安定感のある宮口大輝の2枚看板が安定。打線は大砲こそ不在だが、俊足巧打の1番・来田涼斗、3番・重宮涼を中心にソツのない攻めを見せ、守りも堅い。対する東京王者・国士舘は白須仁久、山崎晟弥の2枚看板でリズムを作り、犠打などの小技を絡めて自らのペースに持ち込む。

 啓新(福井)は長身右腕の安積航大、右横手の浦松巧の継投が昨秋は機能し、北信越ファイナリストに登りつめた。終盤に跳ね返す粘り強さも健在で、逆境に強いメンタルを持つ選手が多い。智弁和歌山(和歌山)は昨春選抜準Vのレギュラーが4人残り、3番の黒川史陽、4番の東妻純平らで形成される強力打線は今年も健在。今年に入ってからチームのホームランの数が確実に伸びており、聖地で何本のアーチを描けるか。甲子園春夏68勝の高嶋仁前監督からバトンを受けた中谷仁監督は、この選抜が甲子園初采配となる。(沢井史 / Fumi Sawai)

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