「虐」の極み

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 その2文字は、漢和辞典で隣り合う。「とらがしら(虍)」という部首が同じで、一つは「敬虔(けいけん)」の「虔」、「慎み深くする」の意味がある。もう一つは「残虐」の「虐」で「むごい仕打ちをする」。形は似ていて、意味はまるっきり違う▲多くは移民だったらしい。ニュージーランド南島、クライストチャーチの2カ所のモスク(イスラム教の礼拝所)で銃が乱射され、49人が死亡した。敬虔な祈りをささげる教徒を狙ったテロとみられる▲捕らえられた容疑者たちは、イスラム教徒というだけで人を憎み、移民を「侵略者」呼ばわりしていたともされる。頭に「排外」の一語が浮かぶ▲襲撃したとき、容疑者の1人はカメラで動画を撮影し、インターネットで生中継したという。憎しみも恐怖も世界に拡散させてやれ、と雄たけびが聞こえるようでもある。異常で、残虐の極みと言うほかない▲ニュージーランドは数多くの移民を受け入れてきたというのに。このところ大規模テロは鳴りを潜めていたのに。そんなはずはない、と逆接の「なのに」を並べても詮ない。「虔」を排し、「虐」に取り付かれた者たちは、世界のどこであろうと標的にする▲一方的な憎しみと、その連鎖をどう断ち切るか。うろうろと惑う反テロの道だが、この道を引き返すわけにはいかない。(徹)