史実を基に「生活」の再現を 旧グラバー住宅の展示内容変更 収蔵品の来歴調査

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 今年で開園から45年を迎える長崎県長崎市南山手町のグラバー園。今回確認された昭和初期撮影の旧グラバー住宅の室内の古写真は、少なくともこの20年はほとんど替わっていないという同住宅の内部展示を見直す上で貴重な資料。園内の展示を巡る経緯や現在の取り組みを紹介する。

 英国商人トーマス・グラバーが暮らした同住宅は、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」構成資産の一つ。グラバー園では、同住宅を含めて、幕末から明治中期に建てられた洋風建築9棟を見学できる。

 「観光」施設であることから、居留地時代の暮らしを再現した建物内部の展示は、市の観光関係の部署が長年担当。2008年の指定管理者制度導入以降も、ほとんど同じ展示内容で、専門家からは度々、「何を伝えたいのかコンセプトが分からない」などの指摘が寄せられていたという。

 「こんなに変わらなくて大丈夫かな」。同園学芸員の松田恵さん(32)は、3年前に同園を久しぶりに訪れ、子どもの頃に見たのと変わらない展示に驚いた。その後、縁あって17年春に着任。古びた展示キャプションなど「改善する点が多く、どこから手を付けたらいいか分からなかった」と振り返る。

 着任してすぐに課されたのが、約3千点に上る収蔵品の来歴を調べることだった。同住宅はグラバーの息子倉場富三郎が手放してから戦後、市へ寄贈される約20年のうちにさまざまな人が居住。開園後に寄贈を受けた物も含め、園内の各棟や倉庫などに残る多くの調度品は、グラバーゆかりのものか否かなど、来歴が分かっていない。展示には、検証できていないこれらの調度品も活用されてきた。

 松田さんは、17年12月に発足した有識者による「グラバー園保存活用検討委員会」の助言を得ながら、過去の行政文書や古写真に当たり、調査。収蔵品の中で複数点がグラバー家ゆかりと新たに判明し、倉場が居住していた昭和初期に同住宅の室内「大食堂」を撮った写真も確認された。

 同住宅内部を撮影した写真はほとんどなく、居留地史に詳しい長崎総合科学大教授で同園名誉園長のブライアン・バークガフニさん(68)は「昭和初期の撮影だが内装はグラバーが住んでいた時代からあまり変わっていないだろう。当時の生活を再現するために大変参考になる」と語る。

 現在、約50年ぶりに同住宅の大規模な保存修理工事を進めている市は、15年に保存活用計画を策定済み。同計画では、現状を踏まえて「グラバーの活動や暮らしぶりを示す」といった展示活用の基本方針を打ち出している。市は20年11月の工事終了へ向け、新年度当初予算に展示替えの設計費約400万円を含めており、開園以来の大きな展示変更が現実的になっている。

 どんな展示が望ましいのか-。バークガフニさんは「まずは史実の発信。今はみんな目が肥えていて、従来の展示では納得しない。きちんとした見識に基づき、訪れる人が当時を感じられるような展示の仕方を市が責任を持って考えないといけない。グラバー園に博物館機能を持たせるべきだろう」と指摘する。

 松田さんは「開園当時の写真を見ると、現在のような県外客中心でなく、市民でにぎわっているのが分かる。地元の方が気軽に集い、長崎の歴史を好きになってもらえる場所にしたい」と話す。

大規模な保存修理工事に入る前の旧グラバー住宅=長崎市南山手町
調査研究をしている学芸員の松田恵さん=長崎市、グラバー園