デスク日誌(3/17):しょんぼり

©株式会社河北新報社

 『ちいさいおうち』(岩波書店)という絵本が好きだった。いとこのお姉さんからもらったお下がりだが、気に入って夢中で読んだ記憶がある。

 米国の作家バージニア・リー・バートンが1942年に発表したロングセラー。水彩の温かみあるタッチで描かれ、今読み直しても味わい深い。

 主人公はヒナギクが咲く丘に建つ赤い家。田舎の小さな一軒家は、都市化の波にのまれていく。新しい道路が延びて家が立ち並ぶ。誰も住まなくなった小さな家は、ついにビルに取り囲まれ…。

 先月、空から東日本大震災の被災地を取材した。海岸で建設が進む防潮堤は、傷を手当てする包帯のようにも思えた。

 宮城県南三陸町に差し掛かり「防災対策庁舎は?」と目を凝らしたが、なかなか見つからない。かさ上げした土地に造られた商店街や道路に紛れていた。

 絵本の家と同じように、防災対策庁舎もしょんぼりしているかもしれない。家の方はめでたく引っ越しができたが、震災の記憶を伝える建物には無理。そこにあってこそだと思うと、寂しさも募る。 (写真部次長 佐々木浩明)