【タイ】日系新興が財閥に技術PR[IT]

大使館とCPが共催、提携支援

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在タイ日本大使館とタイの大手財閥チャロン・ポカパン(CP)グループは14日、タイの首都バンコクで、日本のスタートアップをタイの財閥に紹介するピッチイベント「ロック・タイランド」を開催した。日本からは、モノのインターネット(IoT)などの技術を使った水産養殖向けサービスを展開するウミトロン(東京都港区)や、自動車のビッグデータを活用したサービスを提供するスマートドライブ(同)など10社が参加。タイの大手19社に各社が持つ最先端技術をアピールした。

在タイ日本大使館とCPグループは、日本のスタートアップ10社のピッチイベントを開催した=14日、バンコク(NNA撮影)

「テクノロジーを活用した給餌の最適化により、水産養殖の生産コストを削減できます」。CPグループが本社を置くトゥルータワーで開催されたピッチイベント。日本の革新的なスタートアップが1社当たり約10分間、サービスを財閥に売り込んだ。「東南アジアでの事業拡大に向け、パートナーが見つかれば」。ウミトロンの共同創業者で最高執行責任者(COO)の山田雅彦氏は意気込みを示す。

2016年4月に設立したウミトロンは、IoTや衛星リモートセンシング、機械学習などの技術を用い、海の持続可能な開発と安全な魚の安定供給を目指している。同社が開発したスマートフォンやクラウドを活用したスマート給餌機「ウミトロン・セル」では、遠隔管理による現場作業の軽減や、センサーで取得した海のデータを分析して餌の量や与えるタイミングを最適化し、無駄な餌やりを削減する。魚の生育データの蓄積による業務プロセスの体系化や生産現場の見える化を可能にし、生産コストの削減や持続可能な水産養殖につなげるという。

タイの財閥を前に事業を紹介するウミトロンの山田COO=14日、バンコク(NNA撮影)

「東南アジアは1年を通じて気候が一定のため、漁獲量や捕れる魚の種類に大きな変化がなく、工場でいえば常に稼働している状態。事業環境が適している」(山田氏)。現在はシンガポールを拠点に事業を展開しており、水産業が盛んなタイでの法人設立も視野に入れている。

イベント終了後の懇親会では、同社にはCPグループなど地場の各社が高い関心を寄せていた。CPグループの担当者は、「ウミトロンの事業はとても興味深く、今後協議を進めていきたい」と話し、手応えは十分のようだ。

■CP「日本のスタートアップ力強い」

イベントは、在タイ日本大使館が昨年に始動した日本のスタートアップの海外支援事業「オープン・イノベーション・コロンバス(OIC)」の一環として開催。内向きな傾向にあるという日本のスタートアップを海外に進出させ、国内外で通用するイノベーション創出を支援する狙いがある。スタートアップについては、コストや柔軟性の点で大手企業よりも協業しやすいとされ、地場企業からも関心が高まっている。

今回参加したスタートアップは、OIC運営委員会がイベント開催前に財閥が抱える課題をヒアリングし、財閥が関心を持ちそうな分野から選定した。イベントに出席したCPグループのスパチャイ最高経営責任者(CEO)はNNAに対し、「どの企業も興味深かった。特に人工知能(AI)分野への投資に関心がある。日本のスタートアップは力強い」とコメント。CPグループはこれまでに、日系スタートアップの中でタイを拠点にオンライン決済サービスを提供するOmiseと提携した実績がある。今後も優れた技術を持つスタートアップとの提携を強化する方針だ。

タイ企業と日本のスタートアップの協業に期待を示すCPグループのスパチャイCEO=14日、バンコク(NNA撮影)

会場にはCPグループのほか、インド系石化大手インドラマ・ベンチャーズや商銀大手カシコン銀行、国営石油PTT、製糖大手ミトポン・グループ、流通大手セントラル・グループなど、タイの大企業が一堂に集まり、日本のスタートアップと意見交換などをして交流を深めた。

在タイ日本大使館の寺川聡商務官は、「タイの財閥や日本のスタートアップがこれほど集まったことは過去にない」とした上で、「イベントを通じてタイの財閥の新たなニーズも掘り起こせたため、日本のスタートアップを新たにスカウトし、タイという地を足掛かりとして新興国へ挑戦する道を作っていきたい」と述べた。

■各社がタイ進出を計画

イベントに参加したスタートアップ数社からは、「年内にも現地法人を設立して、タイ事業の拡大を検討したい」という声が上がった。ディープラーニング(深層学習)を活用した情報解析サービスを提供するABEJA(アベジャ、東京都港区)は、今年6月をめどにタイ法人を設立する計画。外木直樹取締役は「タイではこの1年でAIへの関心が急速に高まった。日系、地場問わず引き合いが増えている」と驚きを隠さない。

一方、インターネットへの通信が常時可能な車両、コネクテッドカー(つながる車)サービスなどを展開するスマートドライブも、6月までにタイに現法を置き、東南アジア事業の拡大を狙う。現在は海外で中国に進出しており、「これから伸びてくる市場をターゲットにする」(北川烈代表取締役)考えだ。

同社が提供するサービスでは、コネクテッドカーを通じ、ドライバーの走行データに基づいて運転状況を可視化。危険運転の自動検知やクラウドによる車両情報の一括管理で、ドライバーの安全運転支援や車両管理の効率化が可能なことから、10万人当たりの交通事故死亡者数がアジアで最も多いタイで、交通事故の削減につなげたい考え。製造業向けにAI、IoTサービスを提供するスカイディスク(福岡市)も、近くタイに拠点を設立する計画だ。