子への心理的虐待「面前DV」

施設入所へ難しい立証

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親子分離の必要性訴え

 子への虐待と夫婦間のDV(家庭内暴力)が同時に発覚することが多い。DVを見聞きした子がダメージを受ける「面前DV」などの心理的虐待は急増し、子の発育への影響も懸念されている。ただ児童相談所(児相)や親族が、子の施設入所を家庭裁判所へ申し立てた審判で、〝心理的虐待のみ〟を根拠に認められるケースは依然として少ない。DVを主張しただけでは足りず、現場は「子の心理的影響を立証する」難しさに頭を悩ませる。
(鈴木直人)

室蘭児相がパンフ

イラストやわかりやすい文言で面前DVの危険性を保護者へ伝えるパンフレット

 「ぼくのせいでけんかしてるんでしょ」

 心理的虐待が認定件数の約7割(2017年度)を占める室蘭児相(胆振・日高)。DVの原因は自分自身にあると考える子は多い。一方で、両親はDVを夫婦間の問題と捉えて児相の介入を拒む傾向が強い。児相の職員は「面前DV防止用パンフレット」で、子の発育や精神面への影響を両親に認識させる。

 一時保護期間内に家庭復帰へのプランを描けなければ、児童の施設入所を両親へ打診。同意を拒めば児童福祉法(28条1項)に基づき、家裁への入所申し立てを検討する。

 家裁の審判手続きでは、心理学や教育学を専門とする調査官が子へのヒアリングを通じて心身の状態を把握し、家事審判官が保護者から事情を聴取する。審判では、これらの証拠や児相の立証を基に、家庭復帰や施設入所など方針を決定する。

 ただ、信頼関係の構築を優先する多くの児相が二の足を踏む。同児相の米田浩二所長は「申し立てた時点で対立の構図となり、信頼関係は破綻する。却下されれば関わりすら持てない事態に陥りかねない」と話す。

いじめと性質類似

 家裁は一つの虐待事件に対し複数の虐待原因を認めることが多く、どのような虐待が認定されるかは、その後の施設の選択やサポート方針にも関わる重要な問題だという。

 ただ、最高裁家庭局がまとめた全国の家裁が施設入所などを許可した事件(一昨年)の虐待原因の内訳によると、心理的虐待は18・9%にとどまる。

 子が自分自身を責め親をかばうケースもあり、心理的虐待が子へ与える影響の立証は難しい。「心理的虐待の長期化が子に及ぼす影響を、関係機関と協力して丁寧に立証し、身体的虐待がなくても親子分離が必要な場合があることを訴えるしかない」(米田所長)

 児童福祉法に詳しい中央大学法学部の鈴木博人教授は「親の養育態度など、周囲の言動によって子のメンタルなどに変調を来すという意味で、心理的虐待は学校でのいじめと類似の性質を持つ。物理的な傷害を受けていなくても重大な問題であり、この点を家裁がどれだけ理解できるか課題」と指摘している。