「ここまで続けてきて良かった。みんなに支えられているんだなぁ...」音速ライン - 15th anniversary final-『〆の一杯』2019.3.10@新宿ロフト

3/10 SHINJUKU LOFT 20th ANNIVERSARY PRE-EVENT
音速ライン15th ANNIVERSARY 2017?2018プロジェクト第10弾
音速ライン-15th anniversary final-『〆の一杯』2019.3.10@新宿ロフト

長かった気もするし、アッという間だった気もする。とにかく濃厚な足掛け3年であった。もしかしたら彼らのキャリアの中で、最も目立った動きのあった期間だったのではないだろうか…。そう、2017年末頃より始まった音速ラインの15周年記念イヤーが間もなく終わろうとしている。

この期間は10大トピックと題し、ライブを中心にリリースやドキュメント映画の制作等々、これまで以上に積極的でアクティヴな活動を行ってきた音速ライン。その最後を飾るのはやはりライブ。それがこの彼らの聖地・新宿ロフトでのワンマンライブであった。

ここまで15年まさにファンと共に歩んできた彼ら。その感謝を込めたニュアンスが強く表れていたのがこの晩であった。というのも今回のライブは、まさしくお客さんと一緒に作り上げられたもの。事前に演って欲しい曲を募り、その結果や各位がその曲に込めた想いに応えるように、定番曲、レア曲、はたまたライブでは初披露の曲が現れたりと、それらは感謝の気持ちも込められ贈られていった。

この日の新宿ロフトでは会場に入るなり、正面の壁の2枚の巨大な寄せ書きフラッグが目に入った。「TOUR音速ライン2018」ワンマンツアーの際に全公演を観て回ったファンの方が、メンバーには内緒で各地各会場にてその現地のファンはもとより、スタッフやサポートメンバー、舞台演出スタッフ等々にまで声をかけ集め、同ツアー最終日にメンバーに贈られたものだ。凄く各位の気持ちや想いが文字や言葉として記されており、彼らはファンや回りのスタッフに愛されているなぁ…とつくづく感じた。

「そろそろ行きますよ~!ロフト!!」とはステージに登場した大久保。15周年記念イヤーのライブを有終の美で飾りつつ、来る16年目以降への幸先の良いキックオフにすべくライブは走り出した。その先鞭づけと景気づけは「Our song」が担った。疾走感と共にライブが走り出していく。続く「夕凪の橋」に入ると、ライブはその勢いを保ったまま広角に広がっていく。そこに特有のセンチメンタルさとサポートメンバーの廣橋健のギターがエモさを加えていく。その勢いと高揚感を保ちつつ、さらに拡大させながらノンストップで「ロレッタ」に。楽曲に込めた愛しさと恋しさが、やや暴発気味の疾走サウンドといい具合に融合していく。繰り返される♪全ては君の元へ♪のフレーズが切ない。グイグイ惹きつけるながら突き進んでいく4人。続く「原動力」では若干の明るさとカラフルさが場内に呼び込まれる。トリッキーなイントロやサポートドラマーのクラカズ ヒデユキが生み出すダンサブルなビートの中、いつまでも君と笑い続けて居続けられるようにと願い込められ歌は進んでいった。

「〆の一杯なんで、是非みんな楽しんで欲しい」と大久保。「大久保と二人呑んでると、〆なくちゃと思いながらも、ついついいつも締まらず、店から追い出されるまで居ちゃう。ライブでも自分は最後そんなところが出ちゃう」と藤井。「そうはならないように今日はビシッと〆たい。最後までよろしく!」と大久保がシーンをライブへと戻す。

「夏色の風」からはカラフルさが楽しめた。彼らお得意の夏の夕暮れを感じさせる同曲が、場内をあの日あの頃に引き戻してくれれば、「真昼の月」では、行かないで、言わないで、との切ない言葉たちが会場全ての気持ちも揺らす。藤井の義理の兄のかつての日常や心の機微を描いた「ラリー」では、せめて気持ちだけでも君のもとへ、とのキュンとした想いがヒシヒシと伝わってきた。

「今日はリクエストに応えているから久々にやる曲も多く、それこそ数年ぶりにやった曲ばかり。その分、やりながら色々な当時のことが蘇ってくる」と藤井。「やってくごとに色々なことがフラッシュバックして、曲毎にその頃に戻れる」と大久保が続ける。

ここからは大切な人に向け、幸せを噛みしめつつも、それを失わないようにとの強い自戒の楽曲が続いた。ライブでは初披露となった「素晴らしい世界」は当時シングルのB面曲だったもの。カントリーフレイバーの牧歌性が溢れる中、素晴らしいこの世界で君の手を離さぬようにと歌えば、雅(みやび)やかな旋律や歌詞表現も交えた「大切な人」では、あなたと出会えたことへの感謝と、これからも歳を重ねてもずっと歩んでいく決意へと覚悟を感じた。また、「明日君がいなくなったら」からは再びライブが走り出し、最新曲でもある同曲が彼らの不変性を改めてしっかりと教えてくれた。

「ここまで続けてきて良かった。みんなに支えられているんだなぁ…と改めて実感している。今後の活力にしていくので期待していて欲しい」と大久保が熱く語れば、「大久保と15年間できたのは協調性があってこそ。まさに我々は「人」いう字。2人で支えあって進んでいる」と藤井も語る。

リクエストには選ばれなかったが、どうしても彼らの数あるお酒ソングのレパートリーの中から一曲やりたいと、そのお酒ナンバーの最新、「ハイボールミラーボール」が贈られる。モータースピードな同曲が会場の盛り上がりに火を点け、これをきっかけに後半戦に突入していく。会場のクラップも加わり一緒に形作った「スナフ」では、大久保のスラップを交えたベースソロも魅せどころ。クラカズのドラムソロ、藤井と廣橋による各人のソロのリレーションも盛り上げの火に油を注いでいく。さらにライブを激化させるべく入った「ヒトカケ」では、クラカズのタイトなドラムも手伝い会場のボルテージがグイグイ上昇していくのを感じた。

「この先も僕らはみなさんの期待に添えるバンドになりたい」とは藤井。その後に続いた「スローライフ」では、自分たちはこれからもノスタルジックさを勲章や糧に、真昼の夢を探しながら歌っていく。そんな宣言のようにも響き、このまま突き進んでいくと言わんばかりに放たれた「ヒグラシ」、「スワロー」では最後、会場の大合唱で楽曲を完成へと導き、一緒に楽曲を完成へと至らせた。本編最後は、翌日の震災の日に際し、当時、感じたままを綴った「心のままに」が8年越しのメッセージを込めて、あえて今の心のままに生きていこうと気丈に歌われた。それらは、「人には夢がある。それを信じて、この苦難を乗り越えてこれからも次に向かって共に進もう」そんな感受があり、それは自身に対してはもちろん、これからの音速ラインとみんなとの間への改めての誓いや約束のようにも映った。

アンコールでは今そこにあるものと、そこに向け抱いた気持ちを大切にすべく2曲が贈られた。藤井が「福島の情景や光景を見ながら浮かんできた曲」と語り入った「打ち上げ花火」では、消えないで、忘れないで、この瞬間を感覚をと、集まった者たちに歌い、「逢いたい」では、彼らの変わらない甘酸っぱさと、そこはかとない青春性、そして愛しい人への会いたい気持ちを場内いっぱいに広がらせた。また同曲では、お客さんの大合唱にて楽曲が成立。曲がしっかりとお客さんのものになっていたことを改めて実感できた。

ダブルアンコールにも応えてくれた彼ら。まずはステージに現れたのは藤井、大久保のみ。「みんなで歌いたい」と入った「ありがとうの唄」では最初はギターとベースのみ、そこにサビはお客さんの歌だけで入り、そこに廣橋、クラカズも加わり、最後はステージ/フロア交えて全員で楽曲を完成させていった。それはまるで、これからも僕らは一緒に楽曲を育み、最後には聴き手の中で完成させ、是非とも自分のものにして欲しい。そんなメッセージのようにも受け止められた。

3/30にはこの15周年記念イヤーを振り返る後昼祭もあるが、一旦ライブに関してはここで〆を見た。と同時に彼らが変わりながらも、変わらず贈ってきた、情景感や光景感交えた、いい意味での後悔や女々しさ、今となっては戻ることの出来ないあの時あの選択をしたその場面。それを後悔や戒め、次への糧として進んでいく歌たちを今後も作り続け、歌い続けていく。そんな宣言とも捉えられた一夜であった。

音速ラインはこの15周年を経て、まだまだ、そしてますます進んでいく。そう、みなさんと共に。

セットリスト

1.Our song

2.夕凪の橋

3.ロレッタ

4.原動力

5.夏色の風

6.真昼の月

7.ラリー

8.素晴らしい世界

9.大切な人

10.明日君がいなくなったら

11.ハイボールミラーボール

12.スナフ

13.ヒトカケ

14.スローライフ

15.ヒグラシ

16.スワロー

17.心のままに

Encore

En-1.打ち上げ花火

En-2.逢いたい

Double Encore

En.ありがとうの唄

PHOTO:丸山恵理(LOFT PROJECT) TEXT:池田スカオ和宏

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