自粛の動き

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 NHK大河ドラマ「いだてん」の第10回。先日の土曜昼下がりの再放送は、本放送を再編集して流したという。麻薬取締法違反容疑で逮捕されたピエール瀧容疑者の出演シーンをカットした▲バンド「電気グルーヴ」のメンバーとして活躍する一方、ドラマや映画で俳優として存在感を発揮してきた瀧容疑者。その裏でコカインに手を染めていたというニュースは、芸能界に波紋を広げている▲犯罪をした疑いがある芸能人を作品に出しておくのは、制作者にとってはためらわれることだろう。視聴者のクレームに対する恐れもあるかもしれない▲芸能人の犯罪が表面化するたび、しばしば出演作品の放送中止やCDの店頭回収など自粛の動きが広がる。これに対し過剰反応ではないかと懸念する声も上がる。音楽家の坂本龍一さんは「音楽に罪はない」と表明した▲音楽もドラマも映画も、大勢の人が関わって完成する。1人の不祥事のために作品に触れる機会そのものが奪われてしまうのはいかがなものだろう。見る側、聞く側の選択に委ねられるべきではないか▲批判を受けるかもしれないから、批判を受ける前に引っ込める-。そんな扱いを受ける作品を見るにつけ、作品を生み出すために注がれた多くの人のエネルギーが無駄になるようで、残念な気持ちになる。(泉)