「また島に帰ってきて」 新上五島署奈摩駐在所の中道さん転勤 過去には残留求める署名も

 新上五島署奈摩駐在所に勤務していた中道良輔巡査部長(33)が16日、川棚署長野駐在所への異動に伴い新上五島町を離れた。妻の有希子さん(33)と共に積極的に住民と触れ合い、島の人たちから慕われた5年間。この日は朝から駐在所を約100人が訪れたほか、約150人が有川港で見送り、フェリーが離岸しても手を振り続けた。

 中道さんは諫早市出身。2007年4月に警察官となり、佐世保署などを経て2014年3月に奈摩駐在所に配属された。「これまで1人の勤務がなく、自分が責任を持ち、多様な業務に携わりたい」と駐在所を志望していた。

 管轄は約950世帯約1700人が暮らす町北部の上郷地区。住民と警察の距離が近く、赴任直後から気軽に相談してくれることをうれしく思ったと振り返る。

 力を入れたのは登校時の小中学生の見守り。学校がある平日は、勤務が休みでも制服姿で横断歩道を渡る子どもたちの安全を確保した。あいさつも重視し、約200人の子どもたちの名前を覚えたという。

 中道さんは、ソフトボールなどの試合に出場したり、有希子さんと一緒にお年寄りの転倒予防体操講座に参加したりするなど、夫婦そろって幅広い世代と交流。子どもたちも駐在所に遊びに行くなど、頼りにされる存在となった。

 2016年秋には、異動対象にならないか心配する住民有志から残留を求める約770人分の署長宛の署名が集められた。当時の上司は公的な効力はないことを説明した上で「そこまで思ってもらえ、うれしい」と述べたという。発起人の一人、同町奈摩郷の飲食店主、田島伊勢次さん(48)は「笑顔が絶えず住民に近い目線で相談しやすい人。また帰ってきて」とエールを送る。

 中道さんは「妻の協力もあり地域に溶け込めた。さみしさもあるが、次の勤務地でも住民の皆さんと協力していきたい」と感謝の言葉を述べた。

住民と別れを惜しむ中道巡査部長(右)=新上五島町、有川港ターミナル(住民提供)
妻の有希子さん(左から2人目)と共に、地域のお年寄りと交流する中道巡査部長=新上五島町奈摩郷(2017年4月13日)

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