WECとIMSAでダブル表彰台獲得のハートレー、元耐久王もさすがに「疲労困憊」

 元トロロッソ・ホンダF1のブレンドン・ハートレーは3月13~16日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催された『スーパーセブリング』でふたつのメジャー耐久イベントを戦い、その両レースで総合3位表彰台を獲得した。

 2度のWECチャンピオンでル・マン24時間王者でもあるハートレーは、2017年から2018年にかけてトロロッソ・ホンダF1に所属。その間グランプリに通算25回出場するも、2019年シーズンはレギュラーシートを勝ち取ることができなかった。

 しかし、ニュージーランドが生んだ才能は今季、フェラーリF1のシミュレータードライバーやポルシェのフォーミュラE開発ドライバーを務め、このセブリングのレースウイークではLMP1クラスを戦うSMPレーシングからジェンソン・バトンの代役として1000マイルレースに起用されると同時に、IMSAの最高峰DPiクラスの“強豪”アクション・エクスプレス・レーシングが運営するマスタング・サンプリング・レーシングの第3ドライバーとして伝統の12時間レースに出場することになった。

 15日に行われたWEC第6戦でミカエル・アレシン、元F1ドライバーのビタリー・ペトロフとともにSMPの11号車BRエンジニアリングBR1・AERをドライブしたハートレーは、このレースでワン・ツー・フィニッシュを飾ったトヨタ勢に次ぐ総合3位表彰台を獲得。翌16日に開催された第67回セブリング12時間では、5号車キャデラックDPi-V.Rを駆ってふたたびポディウムに登る活躍をみせている。

 そんなハートレーは、合計20時間に及んだフロリダでの戦いをダブルポディウムという結果で終えると、「身体中のエネルギーが完全に抜けたみたいだ」と疲労を隠さなかった。

 今回のダブルヘッダーラウンドで両レースに出場したドライバーは、ハートレー以外にもヤン・マグネッセンやハリー・ティンクネルなど複数名が存在していたが、ふたつのレースの最高峰クラスに挑んだのは“キウイボーイ”とランガー・バン・デル・ザンデの2名のみだった。

 ハートレーによれば、特に大きな疲労を感じ始めたのはIMSAのレース終盤、4スティント連続走行を任された頃だったという。

「今夜は疲れ切ったよ。シャンパンも少し味わったし、今晩はよく寝るつもりだ」とIMSAのレース後に語ったハートレー。

「最後にキャデラックDPiに乗り込んだ後で4スティントも走ることになったのだけど、まさかそんなことをするとは思ってもみなかったよ(笑)」

「ふたつのレースを戦うとさすがに疲労困憊と言わざるを得ない。昨夜(WEC決勝後の夜)はたぶん4時間くらいしか寝ていないじゃないかな。レースが終わったのが深夜で、今朝も朝早かったからね」

「レッドブルとカフェインを摂取していたし、レース中はアドレナリンも出るから気分はよかった。だけど、さすがに最後の連続4スティントでは苦しくなってきたよ」

「それでも自分のできる限りのことをやったし、ふたつのレースで表彰台に挙がることができて本当にうれしく思っている」

■ハートレー「2種類のクルマの違いにも苦労した」

ジェンソン・バトンの代役として11号車BRエンジニアリングBR1・AERに乗り込んだブレンドン・ハートレー
2019年セブリング1000マイルで総合3位となった11号車BRエンジニアリングBR1・AER
2019セブリング12時間で総合3位となった5号車キャデラックDPi-V.R

 ハートレーによると、2台のマシンに不慣れなだったことが疲労を大きくした原因のひとつになったという。彼はLMP1マシンとDPiカーのどちらも本番の1週間以上前にドライブする経験がなかったのだ。

 元トロロッソドライバーが初めてSMPレーシングの11号車BRエンジニアリングBR1・AERで走り出したのは、決勝6日前のWEC公式テストであった。また、IMSAのキャデラックDPiの初ドライブは14日のプラクティス1回目と、まさにぶっつけ本番状態。

 それにもかかわらず、ハートレーは12時間レースの決勝中、チームのレギュラードライバーであるジョアオ・バルボサとフィリペ・アルバカーキと同等のパフォーマンスをみせる。

「最初のうちはまったく違う特性のクルマや冷えたタイヤに対応するのが難しかった。頭をリセットするのに1、2周は必要だったよ。なぜならキャデラックDPiでの経験があまりにも少なかったからね」

「(そうしたなかでも)最後には本当に気分良く走れるようになった。残念ながら僕たちに優勝できるだけのペースはなかったけれど、このようなことはよくあることだ。一方で(1位、2位となった)両隣のガレージのクルマは完璧なレース運びをしていた」

「ピットストップに問題はなく、トラックでもアクシデントを起こさずに与えられた仕事を全うできた。僕たちはみなベストを尽くした。その上でチームとして表彰台を得られたのは素晴らしいことだ」

「僕たちは今回、本当に素晴らしいレースカーを持ちこめたと思う。キャデラックDPiはドライバーにとってとても扱い易く、ドライブが本当に楽しかったよ」

 2018年のF1アブダビGP以来、初めて公式戦に挑んだハートレーは5月2~4日、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われるWEC第7戦スパ6時間でも、バトンの代役としてSMPの11号車BR1に乗り込む予定だ。

ブレンドン・ハートレーも乗り込んだマスタング・サンプリング・レーシングの5号車キャデラックDPi-V.R
2018/19年WEC第6戦セブリング1000マイルで総合3位を獲得したビタリー・ペトロフ、ミカエル・アレシン、ブレンドン・ハートレー組
2019年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦セブリング12時間で3位表彰台を獲得したブレンドン・ハートレー(右からふたり目)

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