英国ツーリングカー:新型トヨタ・カローラが本格始動。「生産的な数日間だった」

 2019年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権に投入される新型ワークスカー、トヨタ・カローラBTCCのエースドライバーを務めるトム・イングラムは、スペインで実施され成功裏に終わったプライベートテストの感触を踏まえ「今年は騒がしくなるだろう」と手応えを語った。

 今季からトヨタGBのファクトリーバックアップを得て、新たにチーム・トヨタGB withスピード・ワークス・モータースポーツ(SWM)の名称に生まれ変わったチームは、イギリス・オールトンパークでのシェイクダウンを経て、すぐさまスペインへと移動。

 バルセロナ近郊のカラファト・サーキットで3日間のプライベートテストを敢行し、メルセデスを走らせるシシリー・モータースポーツやフォード・フォーカスRSを投入するモーターベース・パフォーマンスらと合同で走行セッションをこなし、完全なニューモデルながら充分なマイレージを走破した。

 イギリスへと戻ったチームは、今後も公式テストのメディアデイを前に開幕戦の舞台となるブランズハッチや、ドニントンパークでのテストプログラムを予定している。

「この新型マシンのロールアウトに際して、ファンや周囲からのリアクションは驚くべきものだったよ」と語ったイングラム。

「もちろん、僕たちにはバイアスが掛かっていて偏りがあるのはわかっているが、このカローラBTCCはこの世のものとは思えないほど素晴らしいルックスで、そのことにはみんな同意してくれると思っている」

「ライバルチームの代表やドライバー仲間からも、彼らがどれほどの感銘を受けたか教えてもらう機会があるし、その事実はトヨタGBとSWMのクルーがどれほど素晴らしい仕事を成し遂げたかを証明する信任票みたいなものだ」

 そのテストでの脅威的ペースから、すでにデビュー前ながらライバル勢から警戒されているというトヨタ・カローラBTCCだが、イングラムもスペインで過ごした3日間を「本当に生産的な数日間だった」と振り返った。

「僕たちはチェックリストのすべてを確認し、たくさんの疑問点を解決して帰ってきた。そして最も重要なことに、クルマは絶対的に素晴らしい感触なんだ。これは新車だし、僕たちもすぐにペースを発揮できるとは考えていなかったけど、カラファトでの初日を終えた段階で『すでにBTCCの水準レベルに達している』という確信があった」

「とくに心強いのは、このカローラが(昨季までの)アヴェンシスと比較してわずかなセットアップの変更により正しく反応することで、そのスタビリティとブレーキング・パフォーマンスはすば抜けているんだ。とても興奮しているし、このマシンで新シーズンを迎えるのは心の底からワクワクするね」

 チーム代表のクリスチャン・ディックも最初のテスト結果に満足すると同時に「シーズン開幕前までにはまだやるべきことがたくさんある」と気を引き締めた。

トヨタGBのファクトリーバックアップを得て、新たにチーム・トヨタGB withスピード・ワークス・モータースポーツ(SWM)の名称で参戦
BTCCの採用するNGTC規定では市販モデルのホワイトボディに共通サブフレームを使用する
2019年からBTCCに投入されるトヨタGBのワークスマシン、トヨタ・カローラBTCC

「我々はソーシャルメディアでの反応と、最初にマシン画像を公開した際に受け取ったすべての熱烈なメッセージに圧倒された。そのカローラが初めてトラックを走り出したときは感情的な瞬間だったし、すべてのメンバーに強い自尊心をもたらしてくれた」とディック代表。

「ホイールベース、空力性能を念頭に置いたマシンシルエット、重心位置、そして重量配分の点で、私たちが以前に走らせていたアヴェンシスとは全く違うクルマになっている。それはつまり、学ぶべきことが山ほどあり、しっかりと慎重に物事を進めなくてはならないことも意味する。でも今は、このカローラがどんな個性と特徴を持って機能するか、完全に把握できたと言っていいね」

 一方、今季からBTCCデビューを果たす元F1ドライバーのマーク・ブランデルは、その同じ頃にイギリス・シルバーストンでAmDが運営するトレードプライスカーズ・レーシングのアウディS3セダンBTCCのステアリングを握り、自身のBTCC初テストに臨んだ。

 F1で3度の表彰台を獲得した52歳のルーキーはこの日、小雨舞うシルバーストンでドライ路面とウエットパッチが混じる寒さ厳しいダンプコンディションでのツーリングカー初テストとなった。

 それでも1992年のル・マン24時間ウイナーは最初のドライブに満足だと語った上で「まだ学ぶべきことがたくさんありそうだ」と、謙虚な姿勢で1日を振り返った。

「この日を迎えられてうれしいし、僕が予想していたよりもマシンは良かったよ」とブランデル。

「難しいコンディションのなかで、なんとか限界に近づこうと挑戦してみたが、同時にBTCCで成功を収めている面々がどれほどのレベルで戦っているかが理解でき、尊敬の念も抱いたよ」

「コプス・コーナーの進入では5速からシフトダウンしてステアすると同時に、駆動輪のフロントを軸にリヤが巻き込むように流れる。これはFFマシンの特徴だけど、僕のコンフォートゾーンとは大きく外れた挙動でもあるね」

「これはF1やプロトタイプスポーツカーなど、数多くの経験をしてきた僕のキャリアをもってしても、慣れるまでに時間が掛かる作業になりそうだ。フロントホイールドライブのBTCCカーから最大限のパフォーマンスを引き出すためには何が必要か、それを見つける旅になりそうだ」

 シルバーストンの翌日にはオールトンパークへ移り、さらなるマイレージを稼いだブランデルは、この後もノックヒルでのテスト継続が予定され、さらに3月末のブランズハッチ“メディアデイ”を経て、4月6~7日に同サーキットでの開幕戦を迎えるスケジュールとなる。

「速いマシンで限界を見極めて、横滑りしながらドライブするのは最高の感触だ。僕はまだ少し“サビ”を落としきれていないし、今後も多くのことを学ぶだろう。その最初のステップを踏めて本当に楽しかった。今年は面白いシーズンになりそうだ」

『カローラ』としては約30年ぶりのBTCC復帰となる
イングラム、ディック代表ともに「ベースカーの優れた素性が活かされた」と自信を見せる
初テストでアウディのステアリングを握ったマーク・ブランデル。代表のショーン・オランビーも「彼はすぐにプッシュし始めた」と満足げなコメント

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