特集1 東部沿岸地域の活性化と記憶・経験の伝承に向けて

宮城県仙台市 仙台市政だより2019年3月号

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東日本大震災から間もなく8年。津波により大きな被害を受けた東部沿岸地域では、かさ上げ道路の整備、集団移転跡地の利活用事業、海岸公園の再生など、復興に向けた取り組みが進められています。そのような中で今、再び地域のにぎわいを取り戻すための環境づくりや、同じ被害を繰り返さないように命の大切さを語り継ぐ活動など、ふるさとへの想おもいに根差した市民の活動が行われています。

■お茶っこ飲みながら女子会(新浜町内会 女子会)
宮城野区新浜地区の住民は、津波被害により仮設住宅等での生活を余儀なくされました。新浜に戻ってきても、住人が減り交流の機会が少ないため、家に引きこもってしまうのではと心配でした。そこで、震災前のようにお茶飲みをするなど集まる機会を設けるため、平成25年に「女子会」を結成。地域に住む50代から70代の女性20人程度が定期的に集まり、料理や手芸、生け花などをしています。物を作ることも楽しいですが、みんなで顔を合わせておしゃべりすることが一番。
震災に対するつらい思いがあっても、心穏やかに笑顔で生活できればと活動を続けています。
女子会で震災前のつながりが戻ってきたように思います。人は人の中でしか生きられない、住民同士の交流が大切だと改めて感じています。

■東六郷に再びにぎわいを(わたしのふるさとプロジェクト)
若林区六郷東部地区では、震災で住む場所が無くなり、住民が離れ離れになりました。戻ってきて暮らしている人もいますが、そうでない人もいます。みんなで再び交流できる機会をつくり、地域の活性化につなげようと、平成26年に「わたしのふるさとプロジェクト」を立ち上げました。

餅つきや太鼓の演奏を楽しみつつ思い出話に浸る「来てけさいん♪ お餅と太鼓で思いでばなし」を皮切りに、平成29年3月に閉校した東六郷小学校の校舎を送る会や小学校跡地での夏祭りも開催しました。今年の1月26日には震災の犠牲者を弔う「鎮魂の花火」を実施し、約200人と予想を超えるたくさんの人に集まっていただきました。参加した皆さんから「地元の人と会えてうれしい」「交流する機会をつくってくれてありがとう」といった感謝の言葉をいただき、継続して活動する励みになっています。

■東六郷小学校跡地の利活用に向けて(東六郷コミュニティ市民委員会 まちづくり部会)
若林区六郷東部地区の未来について話し合う「まちづくり部会」を平成26年に結成しました。地区の町内会長を中心に、PTA役員などのメンバーで、東六郷小学校跡地の利活用等について検討しています。あらゆる世代の住民が交流できる場にしたいと話し合いを重ねており、今後、芝生や遊具、震災で絶滅したと思われた井土メダカが住める池などが整備される予定です。

平成29年からは東六郷コミュニティ・センターで「ふるさと交流祭」を開催し、地域にゆかりのある人が毎回300人ほど参加しています。地域の伝統の黒潮太鼓や六郷ふるさと音頭などのステージ発表をしたり、参加者が集まって懐かしい話をしたりしています。定住人口は減りましたが、交流人口を増やすため、これからも地域の方以外にも参加いただけるような活動を計画していきたいです。

■震災の体験をリアルに伝える(婦防みやぎの朗読会)
震災の体験を次の世代に残したい。この思いから、まずは当時仮設住宅で暮らしていた方や知人を訪ね、体験文を一冊の文集にしました。その後、若林区の被災者から寄稿された体験談も追加したこの文集を基に、朗読の活動を平成25年から行っています。宮城野区の婦人防火クラブ員を中心に15人ほどで活動しており、平成27年3月に仙台で開催された国連防災世界会議や、学校、集会所などで朗読を披露したほか、毎年3月頃には、宮城野区文化センターのイベントで発表しています。今年は2月23日に発表しました。

あの日から間もなく8年がたちますが、心の傷が癒えない方はたくさんいます。私自身も津波による被害に遭い、命の重さや大切さを痛感しました。記憶を風化させないために、また、これらの思いを感じてもらうためにも、ぜひ多くの方に聞いていただきたいと思います。

■荒浜小学校を防災教育に活用(宮城教育大学教職大学院)
昨年6月、防災教育に関する授業で若林区の震災遺構仙台市立荒浜小学校を視察しました。震災当時荒浜小に勤務されていた先生のお話を伺い、子どもたちに、被災した校舎に直接触れ、命の大切さを感じ、展示を見てここに暮らしていた人々の思いを感じてもらいたい、そして、防災意識を高めてもらいたいと思いました。そこで、防災教育の一環として市内の小・中学校の学習でさらに荒浜小を活用できるよう、見学プランなどを盛り込んだ教員向けの手引書と、見学ポイントを示した児童生徒向けのワークシートを作成しました。

作成するうちに、荒浜小での出来事を自分ごととしてとらえるようになりました。子どもたちにも自分と結びつけて考えてもらいたいです。記憶や記録はただ残すだけではなく、そこにいろいろな人の思いと行動が加わることで、本当の伝承、復興になると私たちは思います。

問合せ:
・掲載の地域住民の活動については
宮城野区・若林区まちづくり推進課ふるさと支援担当

・婦防みやぎの朗読会の活動については
宮城野消防署
【電話】022-284-9211

・防災教育については
防災環境都市・震災復興室
【電話】022-214-8098