2月の土曜、柔らかい日の光が差し込む学校の教室。円周率を用いた計算式を黒板にチョークでコツコツと書き記す音が静かに響く。熱心にペンを走らせる生徒たち。先生が「球のこの部分。この面積を求めるにはどうすればいいでしょう」。ある子は悩み、ある子はひらめいて手を上げる。
ここはニューヨーク補習授業校のロングアイランド(LI)校の教室。毎週土曜、幼児部から高等部までの生徒らが日本語で授業を受ける。総領事館を通じて配布された教科書に沿って進む。アットホームな雰囲気の中、個性を尊重しつつ礼儀も重んじる。授業は「起立、礼、着席」で始まり、最後も礼で終わる。学活もある。
この日の数学の授業は1コマ50分で2コマ。球を8等分した場合の一つの面積と体積を導き出す。「特に表面積に気を付けてください。求め方、分かるよね?」と渡邉芳雄先生が生徒の理解度を確かめながら指導する。分割した球体の表面積を求める計算は「このバナナの皮みたいなね」と図示して卑近な物にたとえたり、「リンツのチョコを食べる時、ナイフでカットして大きさを考えたりすると、数学がおいしく勉強できるんですね」と笑いを取ったりして和やかに授業が進む。
答えが分かった生徒は「OK!」とすかさず褒める。途中、教頭先生が各クラスを巡回して授業の進行を確かめ、悩んでいる生徒がいれば優しく肩をたたいて「大丈夫?」と気遣う。
終始、展開図と立面図、投影図を駆使し、対象を多角的に見つめるよう促し、最後は「数学でも経済学でも日常でも、ミクロとマクロ、小さい視点と大局的な視点で見られる人間になりましょう」とまとめた。
休憩時間には友達同士で談笑したり、3月の修了式の打ち合わせをしたりと思い思いに過ごす。みんな、学校生活を満喫しているように見えた。
幼児部から通っているクイーンズ区サニーサイド在住の佐伯穂ノ子さんは「幼なじみのみんなと一緒に学んでいます。数学は図の展開とか段々難しくなってきたけど、先生の授業は分かりやすい。でも好きな科目は、新しい漢字がたくさん出てくる国語です」と笑う。同じく国語が好きな延原伶さんは数学の授業中も積極的に手を挙げる姿が目立った。「先生もみんな優しくて楽しく学習しています。いろいろある季節ごとの行事も楽しみ」と話した。
今年から通い始めたベンソン・アレックスさんは「数学が好きです。パズルを解くみたいな感覚で。地理は少し苦手。通い始めたばかりだけど、友達もたくさんできました」とすぐに慣れ始めた様子で楽しそう。
他にも初等部の国語の授業では「モチモチの木」を朗読したり、幼児部は雪だるまの工作をしたり、それぞれの学年に合った内容を学習していく。
The Japanese Weekend School Of New York
LI校とウエストチェスター校(W校)がある。毎週土曜、年45回の授業、入学式や卒業式の他、スピーチ大会など行事も多い。
【問い合わせ】
http://www.jwsny.org/