社説(3/20):チベット動乱60年/中国は対話で解決の道探れ

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 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世がインドに亡命する原因となった1959年の「チベット動乱」から60年を迎えた。中国政府による人権抑圧は緩む気配はなく、現地の状況への国際社会の憂慮は募るばかりだ。

 中国政府は極めて時代錯誤的で、普遍的な価値観とは全く相いれない人権弾圧を即座に中止し、チベット亡命政府側と対話による解決を模索すべきだ。日本など先進諸国もまた、中国に対して人権状況の改善を強く促す責務があるはずである。

 先週、米国務省は世界200カ国・地域以上を対象にした2018年版の人権報告書を発表し、この中で中国の人権状況を強く非難した。

 記者会見したポンペオ国務長官は中国が少数派のイスラム教徒の拘束を新疆ウイグル自治区などで加速していると批判。「キリスト教徒やチベット系住民、政府に反対意見を持つ人々への迫害も強まっている」と語った。

 こうした状況は今に始まったのではなく、極めて長期間にわたって続いているのが実情だ。チベット民族やその他の少数民族は、人権、宗教、政治など、あらゆる面で抑圧されているといわれる。

 チベット動乱は59年3月、中国共産党が「チベットは中国の一部」として軍が進駐、激しく反発するチベット人僧侶や住民らと武力衝突を引き起こした。直後にダライ・ラマはインドに亡命、北部ダラムサラに現在に至る亡命政府を発足させた。

 88年、ダライ・ラマは独立ではなく、高度の自治を求める「中道のアプローチ」を国際社会に宣言した。これは中国政府による破壊的で暴力的なチベット統治に対する亡命政府側の譲歩とも言える苦しい妥協案だった。

 02年には中国側もやや融和的な姿勢に転じ、ダライ・ラマの特使と中国との公式対話が始まった。しかし、10年以降は、公式対話は中断したままだ。中国政府は対話を早急に再開し、解決の道筋を探るべきだ。

 歴史的に見れば、チベット問題は、明らかに中国側に原因がある。しかし、中国側がダライ・ラマを「国家分裂主義者」とののしる一方、亡命政府側も非難の応酬に終始していては、状況の改善にはつながらない。

 中国国内ではウイグル族への弾圧も激しくなっているという。国連人種差別撤廃委員会は、100万人以上のウイグル族などイスラム教徒がテロ対策の名目で収容キャンプに拘束されているという報告があったと発表している。

 チベットや新疆ウイグルでは、外国人記者は自由な取材ができない。人権弾圧の詳細が外部に伝わるのを中国政府が恐れているためだ。多民族の融和が図れず、人権抑圧が続く状況では、中国は国際社会において異様な大国として認識されるだけだ。