アヴリル・ラヴィーン『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』 難病を乗り越え届けられた心からのロック

アヴリル・ラヴィーン『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』

 5年ぶり、通算6作目の新アルバムは難病を乗り越えすべての面で大人に生まれ変わったアヴリルのロック・アルバムです。34歳の彼女に今更大人と言うのもおかしいですが、オープニングの「ヘッド・アバーヴ・ウォーター」で“絶望の海原に負けるわけにいかない”、そしてエンディングの「ウォリアー」で“私は諦めたりしない、何度だって乗り越えてみせる”と歌う彼女に、池江璃花子選手にも通ずる人の強さを感じます。

 14年、難病のライム病にかかり一時は死をも覚悟した彼女、ある日ベッドで抱きしめてくれた母親に「自分が溺れていくような感じ」と言ったことからタイトル曲のイメージがわき、再び歌うことを決意、復活したのです。上記2曲以外は恋愛や人生をテーマにしたものですが、ヒット指向の曲ではなく様々なしがらみから抜け出す決意にみちた大人の歌になっています。堂々巡りの恋に決着をつける「テル・ミー・イッツ・オーヴァー」、心の平和を歌う「イット・ワズ・イン・ミー」いずれも名曲です。

(ソニー・ミュージック・2400円+税、デジパック仕様3500円+税)=北澤孝

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