料亭「春海」を学びの場に 人材育成施設として活用 ミスルトウ(東京)が建物取得

 新時代の「学びや」を-。起業支援などを手掛ける「Mistletoe(ミスルトウ)」(東京)は19日、今月末で92年の歴史に幕を下ろす長崎市鍛冶屋町の料亭「春海(はるみ)」の建物を取得したと発表した。学生や起業家、研究者ら幅広い層の若者を集め、人材育成などを図る「教育コミュニティ」施設として今秋にも開設する。
 ミスルトウは起業家や投資家らでつくる組織で、起業支援や共同創業などを展開している。創業者で出資者の孫泰蔵氏が、歴史的な建造物の活用に関心があり、新たな時代の学びやを創設したいと考えたことがきっかけという。
 長崎は歴史的に遊学者が集い、料亭は他分野の人々が交流する場でもあったことに着目し、起業家やアーティスト、学生らの学びの場を生み出す。教育カリキュラムはつくらず、社会的問題をテーマに研究やワークショップなどで主体的にアイデアを出し合う過程で個人の課題解決力を養う。
 ミスルトウは社会課題の解決や人材育成などを目的に、出資や人材支援などで協力する。約半年をかけて建物を修繕する間に内容を具体化し、今年の秋から冬にかけての開業を目指す。
 孫氏らが19日、長崎市役所に田上富久市長を訪ね、内容を伝えた。孫氏は「料亭はもともと未来を語り合う場所で、学びやにふさわしい」と強調。「若い世代と一緒に学び成長しながらイノベーションをつくり、社会を良くしたい。長崎がその第1弾として他地域のモデルになれば」と話した。
 春海は1927年創業。建物は2015年に国登録有形文化財となり、今月末での閉店が決まっていた。

国登録有形文化財となっている料亭「春海」の建物=長崎市鍛冶屋町
料亭「春海」を活用した教育コミュニティについて語る孫氏=長崎市役所

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