子ども虐待対応  多職種連携、院内にチーム 熊本大病院

©株式会社熊本日日新聞社

 虐待を受けた子どもを医学的な面から早く見つけることは、医療機関の役割です。熊本大病院は、院内各部門の多職種が連携して、子ども虐待に緊急に対応する院内組織「チャイルド・プロテクション・チーム(CPT)」を設置しています。同病院新生児学寄付講座の三渕浩・特任教授に聞きました。(高本文明)

 -子ども虐待への医療機関の対応ではどんなことが大切ですか。

 「初期対応の原則として、けがをした子どもが来院したらまず虐待ではないかと疑う気持ちが必要です。子どもの安全を緊急に確保すること、個人ではなく組織で速やかに対応することが原則です」

 -熊本大病院では、どのように対応していますか。

 「当院は2010年に虐待対応委員会を設け、緊急対応のできる実働組織として16年10月に『子ども虐待対応院内組織』、CPTを結成しました、CPTとは、Child Protection Teamの略です」

 -CPTの意義や狙いを教えてください。

 「医療機関は、虐待やネグレクト(育児放棄)を受けて、医学的な症状や病態を示している子どもを発見する立場にあります。さらに専門機関として虐待を受けた子どもの診断を関係機関に提供するという極めて重要な職責を担っています。CPTは、重要な局面での判断を個人で済ませるのではなく、組織的に対応します」

 「個々の職員の責任と負担を軽減し、役割分担を明確にした上で、院内の対応方針を統一し、関係機関との連携を円滑に進めることができます」

 -チームの構成や業務は。

 「各診療科の医師や看護師、心理士、ソーシャルワーカー、救急、医療安全、事務部門など多職種で構成しています。虐待を受けたと疑われる18歳未満の子どもを担当する医師からの相談対応や、子どもの状態・家族状況の把握、初期対応、児童相談所など関係機関との連絡調整などを行います。特に家庭環境にリスクを抱え、育児が困難と予想される特定妊婦など、周産期のハイリスクケースに対応するのが熊本大病院の特徴です。子ども虐待を発見するためのチェックリストも作っています」

 -どんな事例がありますか。

 「CPTとして対応したのは6件で、身体的虐待疑いが1件、ほかは特定妊婦でした。精神疾患のある妊婦が切迫早産で入院しても喫煙をやめず、迷惑行為も見られ、出産前から児童相談所などと連携して、赤ちゃんの保護を検討し、乳児院に入所させ、兄を児童施設に保護した例がありました」

 -虐待を起こすリスクのある親はどんな困難を抱えていますか。

 「家庭環境が整っていない、家族や周囲から孤立していることが多く、妊婦健診を受けていない、医療機関を受診しないなど、リスクを高めている場合が多いです。子どもは親からの遺伝的な影響や母体の環境、薬物の影響などを受けやすく、子どもの成育環境が整わないと、発達の面で、問題や育てにくさを生じやすくなります」

 -子ども虐待対応の課題は。

 「院内が連携してチームで対応し、児童相談所や行政、地域との連携が不可欠です。特に顔の見える、共感できる関係が重要です」

 「安心して子どもを産み育てることができる環境を整備するための成育基本法が昨年12月に成立しました。保護者による体罰を規制したり、児童相談所の権限を強化したりする関連法改正案が19日、国会に提出されました。虐待を防ぐ法的な裏付けが整備されていくことを期待しています」

 「子どもの安全のためには保護へ先手を打つことが重要ですし、後手、すなわち支援やフォローにより親子関係を再構築させることがさらに大切です。地域社会への啓発や社会全体の意識改革も必要です」

(2019年3月20日付 熊本日日新聞朝刊掲載)