2016年限りで現役引退… 波乱万丈の野球人生を送った元DeNA右腕の今

計6か国でプレーし2016年に引退した元DeNAの冨田康祐【写真提供:インプレッション・平尾類】

2016年限りで現役を引退した元DeNAの冨田康祐氏

 元DeNAの冨田康祐は16年限りで現役引退し、愛知県内で父・昭雄さんが経営する総合工場管理「冨田商店」で働いている。産業廃棄物の収集運搬、産業用機械の解体・据付、とび・土工工事事業など業務は多岐にわたる。「実は高所恐怖症なんです。でも仕事だからそんなこと言ってられません。会社や取引先に迷惑をかけますから。慣れれば大丈夫ですよ」と屈託ない笑顔を浮かべた。

 PL学園では前田健太(ドジャース)の控え投手兼中堅手として3年春のセンバツに出場。その後は青学大、四国アイランドリーグ香川、DeNAを経て、プエルトリコ、米国、豪州、メキシコ、台湾と計6か国でプレーした。実際に異国でプレーしたことで、日本で報道されている情報とのギャップに驚かされることもあった。

 その象徴が米国だった。15年にレンジャーズとマイナー契約を結び、1年間プレー。その時の経験で指導者への思いが芽生えたという。

「米国ってパワーとスピードが凄くて自由なイメージがあるじゃないですか。でも実際に体験して全く違いましたウエートトレーニングは重量でなく、正しいフォームで行っているかトレーニングコーチが厳しくチェックする。休憩時間も秒単位で決まっています」

 6月には1Aのスポーケン・インディアンスでプレーした際にはカウント別の被打率が書かれた資料を登板後に毎回渡される。

父・昭雄さんは「おまえがユニホームを着てコーチをしている姿も見たい」

「抑えた、打たれたという結果より内容を重視します。ファーストストライクの確率が低いとか。打たれているのは投手不利のカウントが多いから修正する必要があるなど具体的にわかりやすく説明してくれる。コーチもデータを細かく重視するので面白かったですね」と興味がわいた。

 16年7月に台湾で現役引退を決断したが、独立リーグ・香川の西田真二監督に「おまえの経験を若手に還元してくれ」と声を掛けられ、5年ぶりに古巣でプレーした。主に救援で5勝0敗1セーブ、防御率1.80と好成績を残す一方、米国でデータを重視した野球に触れたことで、新たな着眼点が生まれた。「プロ野球や海外で得た視点で見ると、昔は感じられなかったところが見えて、若手にアドバイスをしているうちに指導者に興味がわいてきました」

 父・昭雄さんには「おまえがユニホームを着てコーチをしている姿も見たい」と声を掛けられたという。「家業を継いで家族もいますしね。指導者になりたいという思いも簡単には決められない。でもずっと野球に携わりたい思いはあります」。波乱万丈の野球人生を送った冨田の今後が楽しみだ。文/構成 インプレッション・平尾類

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