F1併催のオーストラリアスーパーカー第2戦、同士討ちの波乱もフォード駆る王者が4戦3勝

 F1開幕戦オーストラリアGP併催イベントとなったVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第2戦メルボルン400は、開幕前から好調を維持する王者スコット・マクローリン(フォード・マスタング/DJRチーム・ペンスキー)がグリッドまでのインスタレーションでマスタング同士でクラッシュする波乱に見舞われるも、そのレースを除いた4戦3勝を挙げ、開幕から実質5連勝と最高のシーズンスタートを切っている。

 変則4ヒートのタイムスケジュールとなり、F1より一足早くアルバートパーク現地木曜の3月14日から幕を開けたシーズン第2戦は、今季から投入されたフォードのニューウエポン、マスタング・スーパーカーをドライブする2018年王者マクローリンが開幕前テストからの勢いそのままに、予選4セッション中3つでポールポジションを獲得。日曜開催の最終レース6に向けたグリッドだけティックフォード・レーシングのチャズ・モスタート(フォード・マスタング)にポールを譲ったものの、それでもフロントロウを確保するなどGen2規定に合わせたマスタングの戦闘力を見せつける予選結果となった。

 このメルボルンでのオープニングとなる25ラップの金曜レース3でもその情勢は変わらず、ポールシッターのマクローリン以下、チームメイトのファビアン・クルサード(フォード・マスタング・スーパーカー/DJRチーム・ペンスキー)、キャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング・スーパーカー/ティックフォード・レーシング)、ウィル・デイビソン(フォード・マスタング・スーパーカー/23Red Racing)、そしてモスタートと実にトップ5をマスタングが独占。

 明けた土曜午前のレース4、13ラップの勝負もマクローリンが勝利を飾りマスタング勢が表彰台を独占。チャンピオンチームであるトリプルエイト・レースエンジニアリングのジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・レーシング・オーストラリア)が4位に食い込むのが精一杯となり、マクローリンの週末全勝が現実味を帯びてくる。

 しかし同日土曜午後開催のレース5に向けたインスタレーションラップで事件が勃発。ダミーグリッドに向かうためコースインしたマクローリンと、同じくフォード・マスタングに乗るモンスターエナジー・マスタングのウォーターズがクラッシュ。

 ターン5出口でフロントロウに向け急いだウォーターズがマクローリンをパスしようとした際、シェルVパワー・レーシングのマスタング右リヤに左フロントから激突する形になり、両車は大きく破損。2台ともになんとか自走でピットへと戻ったものの、ダメージは思いのほか大きくリペアタイムを要するため、揃ってレース5への出走を見合わせる事態となった。

開催直前にNZで発生したテロ事件への追悼の意を表するべく、全車にNZを象徴するシルバーファーンが描かれた
プラクティス2から予選3セッションで最速を刻んだマクローリン。R3はマスタングがトップ5を独占
土曜午後のレース5を前に、マスタング同士でまさかのアクシデントが勃発。マクローリンの右リヤは大きく破損する事態に
予選でもマクローリンの全制覇を阻止したチャズ・モスタートが、決勝でも星を拾うことに

 フラストレーションを表現するようにステアリングを激しく打ち付けながらマシンを降りたマクローリンは、TV中継のリポーターに対してウォーターズへの不満をぶちまけた。

「あいつの職業はなんなんだ!? 僕はファンやスポンサー、シェルVパワーとチーム、そしてクルーみんなのために戦いたかったのに、あいつがすべてをぶち壊した」と激昂したマクローリン。

「僕は週末を通じてずっとそうしてきたように、今回もグリッドへ向かうアウトラップで念入りにタイヤのウォームアップを進めていた。どのドライバーもみなそうやってレースに挑む準備をしているだけなのに、あいつがなぜあんなことをしたのか理解不能だ」

 誰が過ちを犯したのか、という問いに対しても「僕は至って通常の手順でグリッドへ向かっていただけだ。こちらに何の落ち度もないことは明らかだろう。彼からの謝罪を期待している」と怒りが収まらぬ様子のマクローリン。

 しかし、一方のウォーターズも「彼が僕だけに非を押し付けるのはいただけない」と反論した。

「僕はただ前を行くチャジー(モスタート)を追っていただけで、タイヤを温めたいならグリッドについてからでもそれをする時間はたっぷりあるはずなんだ」とモスタート。

「僕はその時点までにすでに何台かのマシンを追い越し、ターン5でも同じようにスコッティ(マクローリン)をパスしようと、コース限界まで右によって進んだんだ」

「でも彼は僕を見ていないのか、極端にマシンを左に振ったかと思ったら、次の瞬間には僕のマシンにヒットしに来て彼のリヤホイールに張り付いた。こんなの馬鹿げてるよ」

 結局、この25周のレース5はセカンドロウに並んでいたブラッド・ジョーンズ・レーシング(BJR)のティム・スレード、ニック・パーキャット(ともにホールデン・コモドアZB)を逆転したモスタートが勝利。2位に7度の王者経験者ウインカップ、そしてスレードの表彰台となった。

 そして日曜開催の最終レース6にはDJR、ティックフォードともにマスタングのリペアが済み、セーフティカー絡みのレースでマクローリンが逆転を決め週末3勝目をマーク。ポールシッターのモスタート、ウインカップが表彰台に続き、前日事故の当事者ウォーターズも4位に入っている。

 続くVASC2019年シリーズ第3戦は2週間のブレイクを経てオーストラリア大陸を離れ、タスマニア島のシモンズ・プレイン・レースウェイでの”タスマニア・スーパースプリント”が控えている。

アクシデント後には話し合いを持ち、和解して日曜に臨んだマクローリンとウォーターズ
セカンドロウ独占など、2019年は好調なシリーズ開幕を迎えたBJR陣営は「大いなる進歩」と手応えを語る
エンジントラブルや前年同様のホイール脱落ペナルティなどで勝負権を失ったシェーン-ヴァン・ギズバーゲン
プライベーターとしてニッサン・アルティマで戦うケリー・レーシングもペナルティ続きの不運な週末に

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