小栗旬とムロツヨシ「二つの祖国」出演の決め手とは? プロデューサーが明かす「意外な発見」と「うれしい誤算」

テレビ東京系で3月23、24日に2夜連続で放送される開局55周年特別企画ドラマスペシャル山崎豊子原作「二つの祖国」(午後9:00)。同作は、発行部数250万部突破の大ベストセラーである、山崎豊子の「二つの祖国」を民放で初めて映像化するもので、日本とアメリカ、二つの国の狭間で家族の絆を引き裂かれ、涙の別れを経ながらも未来を信じ、激動の時代をていたくましく生き抜いた3世代64年の愛の物語だ。

主人公で日系2世の新聞記者・天羽賢治を小栗旬が演じ、同じく日系2世で賢治の学生時代からの友人・チャーリー田宮にムロツヨシが扮(ふん)するが、このたび、2人そろっての取材会が行われ、本作についての思いや撮影のエピソードなどを語った。

初めて台本を読んだ時の感想を、小栗は「原作も読ませていただいて、実際、どこまで描けるのかということも考えて、すごく大変な作品になるだろうなと思ったのが最初の印象です。(出演を)とても悩んだのですが、プロデューサーの田淵(俊彦)さんから計15通のお手紙をいただきまして。その熱い思いにほだされて今ここにいるという感じですかね」と振り返った。

ムロは「僕も率直に『僕がやっていい役なのか、作品なのか』というのは、すぐに思いました。でも気付いてみたら僕も40を過ぎていまして、こういう役をやって、こういった作品でメッセージを伝える側の場所に呼んでいただくこともあるのかなと。迷ってはいたんですけど、僕もプロデューサーさんからお手紙をいただいたり、隣にいる小栗くんから連絡をいただいて『ムロくんにやっていただきたい』『一緒に出ていただきたい作品がある』ということで、僕もどちらかというと小栗くんにほだされて、この場にいる次第です(笑)」と出演を決意した経緯を明かした。

今作でのムロとの共演にあたって、小栗は「僕ら数々の共演と言われてますが、舞台では結構一緒にやらせてもらっているんですけど、映像では同じ作品に出ているけどしっかり絡んでないんです。でも今回、チャーリーという役は、自分が出会ってきたムロツヨシという人物の要素の中にチャーリーが持っている“思い”みたいなものが、すごくリンクするところがいくつかあったので『こういう役をムロくんがやると非常に面白いんじゃないかな』と、制作陣に話をしたら興味を持ってくれて。その結果、僕たちがこうしてやらせていただいているんですけれど、現場で見ている感じは『真面目に芝居してるな』って(笑)」と話し、ムロは「しますよ! どの作品も真面目に芝居してるんですよ!!」と笑顔で応じた。

続けてムロが「『ムロくんに重なる部分がある』と言ってくれた、その言葉を芯に、大事に目の前に立って演じております」と返すと、さらに小栗は「そうですね。新鮮は新鮮かもしれないですけど、時々『何こんな真面目な顔してんの?』って(笑)」とさらにちゃかす。それに対してムロも「移動車で写真を撮るのはやめていただきたいですね。移動中は衣装を着てても“素”ですから」とけん制。小栗が「横顔がすっごい二枚目なんですよ。一瞬、ジェームズ・ディーンかなと思っちゃうくらい」と言うと、ムロは喜んで「正解です。ムロ・ディーン(笑)」と便乗し、その場を沸かせた。

対立する役どころの2人だが、実生活でお互いに勝てない点を聞かれると、小栗は「かなわないなと思うのは、共演者のリラックスのさせ方がやっぱりとても…(笑)。一緒に出ている高良(健吾)とも話しているんですけれども、『俺たちは、ああいうことできないね』って。女性キャストたちがムロくんといるとすごく楽しそうなんですよ。高良と2人で『ああいうのできたらいいな』って言ってるんだけど」と明かした。

それには、ムロが「それはしょうがない。僕はそういう生き方をしてきてしまったから。そうしないと“生き場所”がないという。僕もできれば小栗くんとか高良くんみたいにいたいよ。『人見知りなんですぐしゃべれないけど、しゃべれるようになったらしゃべりますけどね』っていう感じが一番いいと思う。あれ一番かっこいいもん(笑)。『今は心が開いてないだけで、開いたら話せるんですよ』っていうの。僕がそれやると『何、あの人カッコつけてんの!?』ってなるから、生き方の違いです。そこがかなわないところですね」と語った。

他のキャストとのエピソードについては、ムロが「頑張ったとは言いたくないですけど、日系2世の役なので、英語のシーンが結構多かったですかね。みんなで練習したり」と話すと、小栗は「ムロくんが英語をしゃべると井本梛子役の多部(未華子)さんが笑っちゃうんです(笑)」と暴露。ムロも思い出したように「あの子とは、一度じっくり話し合いの場が必要なんですけど。私が英語をしゃべっただけで笑うんです。けんかのシーンなのに。プロ意識についてちょっと話し合わないと(笑)」とぼやき、爆笑を誘った。

さらに、小栗は演じるうえで特に大切にした部分に関して、「自分が演じている賢治という人物は、アメリカで生まれ育ちながらも、8歳から19歳までの長い間を鹿児島で過ごしているキャラクターなので、かなり日本人気質を持っているけど、生まれてから培ってきたアメリカナイズされている部分というのもあって。普通に日本人であるならばきっとこうなんだろうけど、そこにまた一つ違う要素が入ってくるので、表現することが難しいと感じながらキャラクターを作り上げてきました」と役づくりの難しさを明かした。

一方、ムロは「全く思想が違うと言ってもいいかもしれないくらい考え方の違う2人。でも、学生時代からの友人関係で、そこは距離感などをすごく考えながら演じました。考え方が全く違うのに同じ学生時代を過ごし、さらに同じ仕事、同じ職場にいたり、仕事を紹介したり…。なぜチャーリーはそういうことをするのか? それは友情なのか対立なのか、そういった部分が作品の中でチャーリー田宮が存在する、天羽賢治とは違う意味だと思うので、そこは意識しました。僕の場合は“野心”というものですね。『どうしてこういう生き方をしたいのか?』の“どうして”という部分を考えながら演じましたね」と自身のキャラクターの心理を解説した。

また、戦争を題材とした作品ということで、小栗は「僕ら自身も戦争を知らないですし、いろんな資料やいろんな背景を見てもやっぱり本当の真実にたどり着くっていうことは難しいじゃないですか。その中で、実際に僕らが演じたキャラクターと同じように兄弟同士が離れ離れになってしまうことも実際にあったり。ロサンゼルスにある『ジャパニーズ アメリカン ナショナル ミュージアム』というところへ行ってきて、『こんなことが現実に起こっていたのだろうか?』という、なかなか想像しがたい数々のエピソードを見ました。それ以降も、世界を見るとまだ色々戦われている方たちがいるので、忘れてはいけないし、争いをしない世界が来てほしいと思います」と一言ずつかみしめるように語った。

ムロは「演じさせていただく上で、なぜ今、こういうドラマをやるのかというところは、しっかり考えなくてはいけないなと。『何で、こんなことが起きてしまったのか?』ということを考えるきっかけや、『同じことが起きてほしくないな』と改めて思う日になればいいと思います。それ以上のことを何か伝えるというよりは、それを考える時間を作れていればいいと感じながら今日も撮影に臨んでおりました」と本作の意義に触れた。

最後に小栗は「日本じゃない土地に行くと『自分は日本人なんだな』と実感するし、『日本てどんなところ?』と聞かれて、話をしていくことによって、逆に自分も日本のことを知っていくこともあったりします。生まれた時から僕は日本人なので、ちゃんとした日本人としての気持ちは持っていたいなとは思いますね」と、日本人であることへの“意識”を真摯な面持ちで語り、ムロも「今、特に自分の国のことを考えるのは、サッカーやスポーツですよね。世界で活躍している日本人の方たちが多くなっていますから応援しちゃいますよね。頑張ってほしいです」と国を背負って戦うアスリートへ笑顔でメッセージを送った。

小栗とムロの言葉を受けて、田淵プロデューサーは「『意外な発見』や『うれしい誤算』が多い(撮影)現場でした。まずは、『私の思い→小栗さんの思い→ムロさん思い』というふうに作品への思いが伝播していったことがお二人のお話から分かって、とてもうれしかったです。実際に現場では、小栗さんの作品への真摯な向き合い方がビシビシと伝わってきて、ほかの出演者の方々にも十分にその思いが伝わったのだと、それぞれの演技を見ていて確信しました。その『真剣さ』というのをリアルタイムで画面を通して視聴者の皆さんには感じてほしいですね。きっと『快い』と感じてもらえると思います。多部未華子さんはとても穏やかな方なので自分からあまり冗談を言ったりするようなことがないのですが、そんな多部さんをムロさんが中心になって笑わせようと計画したりとか、それをそばで見ていて天羽エミ―役の仲里依紗さんがコロコロ笑ってるとか、とても雰囲気がいい現場だったのが『うれしい誤算』でもありました。それが伝わってくるお二人のお話。小栗さんが格好いいのはもちろんなんですが、インタビューで小栗さんがおっしゃっているようにムロさんもハンサムだと僕は思います。35年前にチャーリーを演じたのは沢田研二さん。当時、色気の絶頂期にありましたよね。そんなチャーリーのイメージが僕にはいつもあって、ムロさんは沢田研二さんの色気に似たところがあると常々感じていました。同じことを小栗さんも感じていたんだと知って、『意外な発見』にうれしくなりましたね。視聴者の皆さんもそれぞれの『意外な発見』や『うれしい誤算』を見つけていただきたいです!」とアピールしている。

撮影/チョン ユサン

© 株式会社東京ニュース通信社