まるで迷路のような小路を旅する伊良部島・佐良浜の迷宮世界

宮古島と、無料で渡れる橋としては日本最長の伊良部大橋でつながっている伊良部島。その伊良部島の東側に位置する佐良浜は、港を望む急斜面に家々が張り付くように建つ独特の景観。迷宮世界を旅するような街歩きを楽しめます。

佐良浜に行く途中にも注目したい沖縄のお墓

宮古島から全長3540mの伊良部大橋を渡って伊良部島へ。海岸線の道路を北上して佐良浜を目指しますが、その前にひとつ目のポイントが。道路の両側をお墓が埋め尽くす、異様ともいえる光景に出くわします。

沖縄のお墓は、本州のお墓とは形状が異なり、亀甲墓や屋根をいただいた破風墓などが多く、この地区のお墓も破風墓や家形墓。墓室や前庭が大きいことが特徴で、小さな家のようなたたずまい。そこには沖縄独特の死生観があり、カラフルにペイントされたものや富士山のような形をしたものまであります。

ここを抜けると佐良浜でもう少し。佐良浜は1720(享保5)年に池間島から分村したことに始まり、海洋民族である“池間民族”を自負する地。それを物語るように、100年の歴史を誇るカツオの一本釣りのメッカで、現在でも、沖縄のカツオ漁獲量の約8割を水揚げしています。そんな港を望む集落には、一歩迷い込んだら出てこれないような迷宮世界が広がっています!

ビビットピンクのおやつ&戦闘機の燃料タンクで水を確保

出発は、漁港の目の前にある「おーばんまい食堂」。伊良部漁協の直営店で、カツオやマグロ、グルクン、海ブドウなど、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類をいただけます。佐良浜の家庭の味「魚の酢醤油和え」や、目にも眩しい「ぴんくいげんまい」は佐良浜の定番おやつ。すあまを溶かしたようなねっとりした甘みのビビットピンクに衝撃を受けながら、腹ごしらえをして、いざ迷宮世界へ!

地図を片手に、熱帯植物が繁る遊歩道のような道を進むと現れるのが「アガイノカー」。集落に一番近い井戸で、1966(昭和41)年に簡易水道が敷かれるまでは、集落の北にある「サバウツガー」とともに生活用水と使われていたもの。ただ、塩気が多く飲料用には向かず、各家庭では雨水を貯めて飲料水を確保していたそう。

確かに各家庭には水を貯めるタンクのようなものが備わっていますが、その名残の真骨頂といえるのが戦闘機の燃料タンク。どこから手に入れたかは不明ですが、このようなものまで利用して水を確保していたとは、離島ならではの水の貴重さを伺い知ることができます。

地図には載っていない迷子になりそうな小路が続く

だんだんと上り坂はきつくなり、道もくねくねと。どこに続いているのかもわからない小路が縦横に伸び、ときどき見えるコバルトブルーの海を目印に民家の間を通り抜けていきます。この佐良浜がどれほどの急斜面にあるかを物語るように、“崩壊危険区域”の看板も。

テーブルサンゴでできた石垣、人がやっとひとり通ることができる石段、石敢當、信仰の場である御嶽・・・ 急斜面に張り付くような集落には、そこかしこに島の生活の香りが。もちろん車は通れないので、20mごとに消火設備も設けられています。

コンクリート住宅の中には、スカイブルーやシャーベットグリーンにペイントされた家も。実はこれ、船の塗装であまったペンキを使ったもの。迷路のように入り組んだ小路から碧い海を望むと、コンクリート住宅の佇まいと相まって、どこかヨーロッパの港町を歩いているような不思議な感覚。

坂の途中には、三線奏者のよしさんが経営する、カラフルな色使いがかわいいゲストハウス「あやぐやー」も見つけました! ドミトリーのほかに個室もあり、ゆったりとした島時間が楽しめそう。

佐良浜の街歩きは個人でも楽しめますが、本当に迷路のような小路なので注意が必要。ガイドが付いた「や~がまく~がま」ツアーは、街歩きに加えて個人宅にもお邪魔して、おじぃやおばぁの話も聞けます。所要は90分3000円なので、このようなツアーを利用して佐良浜の集落を歩くと、より一層島の魅力を感じることができそうです!

◆佐良浜◆

【住所】宮古島市伊良部前里添

[All Photos by tawawa]

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