「阿佐ヶ谷・古書コンコ堂」オススメの一冊『くまのパディントン』【古書を求め、町へ出よう】

最近、子どもも大人も活字離れが叫ばれています。たまには誰かのぬくもりを感じる「本」を探しにおでかけしてみませんか?筆者が独自の視点からオススメする古本屋さんと、店主さんが子どもたちにオススメする一冊を紹介。今回は東京・阿佐ヶ谷にある「古書コンコ堂」を紹介します。

古本屋にでかけよう

本のある場所に人が集まり、人のいる場所に本があります。街並みが変わりゆく昨今、古本屋さんは街の中心にある愛すべき場所。そしていつも誰かの心にそっと寄り添う思い出……。

ともに時間を過ごす、誰かのぬくもりを感じる「本」を探しに、今日はおでかけしてみませんか?筆者が独自の視点からオススメの古本屋さんと店主さんが子どもたちにオススメの一冊を紹介していきます。

店名の由来は「玉石混交」から

店名の響きだけで「なにかある」と思わせてくれる「古書コンコ堂」に行ってきました。「コンコ」の由来は「玉石混交」の本を取り扱っているからとのこと。いつ訪れても「欲しかった一冊」が待っていてくれるお店です。

場所は東京・阿佐ヶ谷。駅前を行きかう人々の早足の波にさらわれながら北口ビルの真下を抜けて、八百屋、床屋、お茶屋が並ぶ昔ながらの商店街とイマドキでオシャレな石畳がミックスした景色を直進します。「古本」の看板が見えたらレンガの建物「古書コンコ堂」の入口です。

看板には「古本 買い取ります 古書コンコ堂」

店頭の本棚は均一の値段で販売されています。価格はなんと「103円」と絶妙ですので、気軽に手に取りやすく、ラインナップも豊富で過去のベストセラーから、思わぬ掘り出し物が見つかることもあります。当日も、ふらり本棚に吸い寄せられ足を止めてしまうお客さんも少なくありませんでした。

お店のなかは魔法のメリーゴーランド

さて、町の古本屋さん、と聞いてみなさんはどのようなイメージをもつでしょうか?「入りにくく買いにくい」様子がぼんやり浮かんでいませんか。しかし、近年の町の古本屋さんは進化を遂げ、これまでにない多様なスタイルが出てきています。今回紹介する「古書コンコ堂」は、ひとりでもファミリーでも「オシャレで入りやすい」古本屋さんなんです。

店内は天井からのランプシェードで明るく照らされ、17坪のサイズ感が古本屋さんのジャストサイズなのか、と一瞬妙な考えがよぎるほど、店内に漂う「ほっとする」空間が漂います。じっくりあたりを見回すと、「本」と「自分」だけの場所を作り出す木製の大きな本棚が、実はほかのお客さんや店主さんの気配を感じさせてくれ、落ち着いて本を選ぶことができるのだと気づかされました。

見逃してしまいそうになる右手奥にはひっそりと小窓もあります。通りからどんな本が見えるのか、ぜひ覗いてみてください。店内のあちこちに置かれた味わいある雑貨たちは、お客さんたちに見つけてもらうのを待っているようでもあります。

店内のラインナップは「玉石混交」というだけあり、図録や写真集といったビジュアルに関する本から、大手流通の本屋さんでは買うことのできないリトルプレス※、ZINE※も取り扱っています。ニッチな話題を扱うことが多いZINEは、まさに大人の自由研究。いずれも読みごたえは抜群です。

ジャンルはさらに、文学、ミステリー、音楽、映画、演劇、暮らし、詩歌、昭和マンガ・・・と幅広く、阿佐ヶ谷が中央線沿線ということも特色に挙げられます。お客さんが探している本に応えていくように、文庫から単行本まで、しっかりとしたボリュームで陳列されているので、思いがけないテーマにハマってみることも、ひとつのジャンルを深堀りすることも「古書コンコ堂」ではカンタンにできてしまいそうです。どんなことに興味をもっているか「本」を通して、知らない「自分」を知ることもできるのも古本屋さんをめぐる醍醐味のひとつでありますね。

もちろん自分が探している本はわからないときもあります。そんなときは、面白そうな本をキョロキョロと見て回るだけで、店内を周遊してしまう、さながらメリーゴーランドに乗ってドンドン変わる風景を楽しんでいる感覚にもなりました。並んでいるのは本、回っているのは自分、なのに不思議な話です(笑)

一期一会の絵本・児童書コーナー

実際に触ってみること、背の高い本棚を見上げること、ひとつひとつの経験に、新たな世界への興味の扉を開く可能性が隠れています。町の本屋さんが少なくなり、子どもたちにとって「本」に触れる機会そのものが減っているかもしれません。

「古書コンコ堂」には、絵本・児童書のコーナーも充実しています。嬉しいのは、子どもたちが自分で選べる高さの本棚であること。子どもたちの目線からも、ワクワクできる本はきっと輝いてみえるに違いありません。

外国の絵本も陳列してあり、子どもたちだけではなく、もちろん大人が楽しめる本もそろっています。古本とはいえ一冊一冊がていねいに扱われているので、大切にしたくなる気持ちは変わりありません。本によっては、すでに手に入りにくい状態であることを思うと、いっそう強い思いが芽生えることもしばしば。

子どもたちにオススメの一冊

最後に古書コンコ堂店主、天野さんに「子どもたちにオススメ」の一冊を伺いました。

『くまのパディントン』は、イギリスで生まれてから50年以上愛されるこぐまの「パディントン」の冒険の数々が楽しめます。2014年には映画化され世界的な人気を誇る一冊です。一期一会の古本なので、お店で見つけることができたらぜひ手に取ってみてくださいね。

店主の天野さん。小さい娘さんも時折お店を出入りしている。
  • 住所:東京都杉並区阿佐谷北2-38-22キリンヤビル1F
  • 営業時間:12:00〜22:00
  • 定休日:火曜日
  • JR阿佐ヶ谷駅北口より、徒歩5分
  • くまのパディントン
  • 著者 マイケル・ボンド
  • 翻訳 松岡 享子
  • 出版社 福音館書店
  • 1967年刊行

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