最年少、小1防災女子から学ぶ 大人がボーっと生きてたらダメな理由

講演中、参考に手渡した資料を読み込む 志穂ちゃん。隣はママではありません

最前列で熱心にノート

先日、とある講演先で、一番前にちょこんと座った女の子がいたのです。ママと一緒に小学生が講演に参加することはよくあることなのですが、その子は、ママと離れてあえて一番前の席に座ったのです。

名前は志穂ちゃん(仮名)、小学校1年生(7歳)。志穂ちゃんは、おもむろにノートとペンを机の上に広げます。

実はこれも講演先でもよくある光景なのです。大抵はそのまま宿題やドリルをやっていたり、お絵描きをするためにノートを開いていたりするのですが、志穂ちゃんは違いました。

私の話す内容に誰よりも反応し、「そうなの!?」とか、「ええっ?」とかリアクションをしっかりを入れてくれるのです。それだけではなく、びっしり取られていくノート。いや、小1ですよ。字を習い始めて「あいうえお」をやっと上手に書けたかどうかと言う子もいる子もいるような小1で、防災ノート取りまくり。

志穂ちゃんが、とった防災メモ。避難所スペースの話は、展示品からのメモ

後でママが講演中に撮ったスライドの写真の枚数をみたら、112枚も撮影していたのだそうです。この熱心さ、わかっていただけるでしょうか?

上記写真にもあるように、講演中、渡した資料にまで、きちんと目を通します。ママから「防災のことが好きだから連れてきました」と聞いていましたが、これはもう天才レベル。

そもそも志穂ちゃんのママが防災に関心を持つようになったのも、志穂ちゃんが先に防災に興味をもったからなのだそうです。お子さんが先というパターンなのですね。

クリスマスプレゼントは防災リュック

そんな志穂ちゃんがなぜ、防災に興味を持ったのかというと、それは、学校で渡されたこちらのリーフレットを読んだからなのだそうです。

写真を拡大 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kenkou/documents/bousaino-to1.pdf

このノートにはこんな事が書かれています。

写真を拡大

これを見て、自分のいのちの守り方をしっかり身につけねばと思った志穂ちゃん。

防災館で学んだり、災害の事を調べるのはもちろんのこと、こんなこともありました。去年のクリスマスプレセントに志穂ちゃんがサンタさんにお願いしたもの、何だかわかりますか?

それは防災リュックなのです。

志穂ちゃんがサンタさんからもらった防災リュック

クリスマスにサンタさんにゲームをお願いする子はたくさんいますが、防災リュックって!!世界中探しても、7歳でそれをお願いしたのは、志穂ちゃん一人かもしれないと思いますし、サンタさんも驚いたに違いないと思います。
 
ところが、志穂ちゃんのすごいところはこれだけではありません。

みなさんは、こんな人に出会ったことはないですか?

「防災リュックのセット買ったけど、そのままにしてますう」とか、「そもそも何も準備していないですう」なんていう大人たちに。

「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とは、志穂ちゃんには、叱られませんけどね。

でも、志穂ちゃんは、ボーっとなんかしていません。セットの防災リュックは当然、もっと使いやすいようにアレンジされました。こちらが、アレンジ後に追加された中身です。

 

私の災害用携帯トイレも準備してくれていたなんて嬉しいかぎり。上のかわいいペンの様なものはLEDライトです。このセンス、素敵♪タオルにしろ、マスクにしろ、自分が気に入っている柄を持っていると災害時も癒されますよね!

下に細かく書かれた字を拡大してみるとこんな事が書かれています。

写真を拡大 志穂ちゃんの防災メモより

かまどの作り方と火のつけ方がまとめてられています。図書館で借りたアウトドアの本からまとめたそうです。

これをリュックに入れて、火起こし道具もスキレットも準備しています。方位磁石も入っています。講演を聞いてますます「アウトドアのテクニックはすごい!」と志穂ちゃんは思ってくれているそうで、春休みには貯めたお小遣いで、ヘッドランプを購入する予定なんですって!

とにかく、これらは全部、自分で考えて、入れ替えているのだそうです。しかも、当然、自らですすんで実践しているのです。繰り返しますが、親が促したからではなく、災害のことについて知ってしまった以上、きちんと対策をしなければとたった7歳の子がここまで頑張っているのです。みなさんは、どうですか?みなさんのまわりの大人はどうでしょう?やらない言い訳ばっかりしていないですか?こんなに頑張っている子の命を災害から守るために、例えば、地域のブロック塀を本気でなくす行動は実施していますか?津波から、てんでんこで素早く避難することを実践して、大人の責務を果たしていますか?

大人は言い訳をやめましょう

たとえ、志穂ちゃんに叱られることはなくても、健気に生きる子どもたちを守るために、私たち大人はもっと責任をもって災害に備えないといけないなとひしひしと感じました。

志穂ちゃんに学校の周りにブロック塀はまだ残っているか聞いてみたら、たくさんあると教えてくれました。

当然、志穂ちゃんは、危険なことはわかっています。だから、反対側を歩くようにしているのだそうです。それだけではなく、お友達に、「ブロック塀は地震で危ない」とは言いだしにくいですよね。わかります。その気持ち。小1女子の会話で、ブロック塀の危険性をいきなり語ると引かれてしまいそうですからね。だから、それとなく、「こっちを歩こう」と誘導することにしているのだそうです。

みなさん、どう思います?

子どもは小さくてもここまで気をつかって、ここまで考えて、大人が考える以上に真面目に実践しているのです。こどもに気をつかわせるようなブロック塀は今すぐ撤去するのが大人の責務だと私は強く思います。大人が実践しない言い訳をするのも情けないと思います。

ということで今回のお話、いかがでしたでしょうか?これは、実話ですからね!
みなさんのまわりにも志穂ちゃんはいると思います。その子たちの思いを裏切らないように、災害でも安全なまちにしていきたいです。災害大国でボーっと生きるのはやめにしましょう!

(了)

 

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