【高校野球】「ギスギスしていた」敵意むき出しから信頼へ、初V目指す履正社バッテリー対談

履正社・清水大成(左)、野口海音【写真:沢井史】

大会1日目第3試合 優勝候補・星稜に挑む145キロ左腕清水大成&野口海音のバッテリー

 第91回選抜高校野球大会(23日から12日間、甲子園)がいよいよ開幕する。大会初日の第3試合では優勝候補の星稜(石川)と強豪の履正社(大阪)が対戦する。プロ注目の奥川恭伸投手に注目が集まるが、履正社だって戦力では負けてはいない。初Vを目指す145キロ左腕・清水大成投手と主将の野口海音捕手のバッテリーに互いの印象と意気込みを語ってもらった。

――野口君は清水君のボールを初めて受けた時のことを覚えていますか?

 野口「実は自分、中学時代に左ピッチャーのボールをほとんど受けたことがなかったんですよ。何人か受けたことはあっても左ピッチャーにはそれほど速いイメージがなくて、(清水君のボールを受けて)こんなに速いピッチャーがいるのかって驚きました」

 清水「ありがとうございます!」

 野口「それまでに対戦した左投手で一番速かったのが及川投手(雅貴=横浜)で、(U15日本代表で同じチームで)受けたこともあって、それくらいの衝撃を受けました」

 清水「え、そんな風に思ってたの? 初耳です。野口は普段から口数が少ないので、こんなことは言ってくれないんです」

――清水君は、野口君に初めて受けてもらった時のことは覚えていますか?

 清水「自分は中学時代に受けてもらったのは年下のキャッチャーばかりだったので、初めての感覚でした。でも、入学直後はよくケンカをしていたんですよ」

――どんな原因でケンカを?

 清水「僕はキャッチャーに意見を言われることが初めてで、納得がいかないことが結構あったんですよ」

 野口「アドバイスを言っているつもりだったのですが、最初はギスギスしていた頃がありましたね」

 清水「自分はアドバイスされるのがイヤだっていう訳ではないんですけれど…何て言ったらいいんでしょうね。…どう?」(野口の顔を見て)

 野口「俺に聞くなよ(笑)」

 清水「何がどうと言う訳ではないのですが、自分の意見を言うとついつい強い口調になってしまって、ケンカ腰になってしまうんですよ。どちらも引くことがないので」

 野口「僕が言ったことに対して、清水はあまり反応してくれなかった時期があったんです。それで“何やねん”って思ってしまって」

 清水「それに対して自分も“何やねん”って思ってしまったんです」

清水「甲子園のマウンドは楽しみたい」、野口「日本一を自分たちが達成したい」

――でも、このままではいけないなと思ったきっかけはあった?

 野口「何があった、とか、この時期をきっかけにというのはないですね。自然となくなっていって、今ではそういうムードになることはないです。というより、こういう感じになっていたのは練習の時だけで、試合の時は全くないんです」

 清水「試合ではないですね。今では具体的に何が、という訳ではないですが、頼りにしています。野口は普段も試合でもあまり表情を出さない方で、物静かな方。練習ではそういうアドバイスをしてくれますが、普段は喋る方ではないですよ」

 野口「試合では表情って出さないものだと思っているので。て言うか、(清水君も)そうやんね?」

 清水「うん。試合では出さない方ですかね。でも、野口は本当に出さないんです。キャプテンだからそうしているのかもしれないです」

――何より野口君たちの学年は2年生まで甲子園の土を踏んだことがない世代でした。それだけに昨秋は勝つことに相当こだわってきたのではないでしょうか。

 野口「それはありました。昨年は悔しいことの方が多かったので……。U15で一緒に戦ったメンバーがどんどん甲子園を経験していて、うらやましいというより悔しかったですね」

 清水「だからこそ、甲子園のマウンドは楽しみたいです。緊張はすると思います。でも、そんな中でも楽しんでプレーすることが一番じゃないかと思うんです」

 野口「自分も緊張すると思います。というか、今からもう緊張しています(笑)。でも、1打席立てば気持ちはほぐれると思います」

――先輩たちからは甲子園で戦う上で何かアドバイスは受けましたか?

 野口「(一昨年センバツ準Vメンバーの)筒井さん(=大成・近大へ進学)からは“寒い”とくらいしか言われていません(笑)。この春は、先輩たちが達成できなかった日本一を自分たちが達成したいです」(沢井史 / Fumi Sawai)

© 株式会社Creative2