全国の平成スポット行ってみた 道の駅や企画展、グッズ、切符・・・

道の駅平成=3月2日、岐阜県関市

 道の駅平成に、平成のクリアファイル―。5月1日の改元を前に、平成にちなんだスポットが人気を集め、関連グッズの売れ行きも好調だ。時代を振り返る企画展が開かれ、平成と名の付く場所がにぎわっている。平成2年生まれの記者(28)が、東京から九州まで各地を巡った。(共同通信=東岳広)

 「新しい元号は、ヘイセイであります」。2月下旬、まず訪れたのは職場に近い東京都千代田区の国立公文書館。この施設は1989年1月7日、当時の小渕恵三官房長官が元号発表の会見で掲げた「平成」の書を永久保管している。書は政府の専門職員が和紙にしたためたもので、故竹下登元首相の親族が寄贈した。

 館内ではレプリカを見学できるほか、売店では「平成」の書をあしらったクリアファイルが「群を抜く売れ行き」(広報)だ。若者は「自分の生まれた元号の記念に」、年配の人は「テレビで見た小渕氏の会見シーンが懐かしい」と買い求め、2018年3月の発売以来、2万枚以上をさばいた。A4サイズで、1枚300円。記者も写真を撮ってインスタグラムで自慢したくなり、さっそく購入した。

国立公文書館で販売している、「平成」の書をあしらったクリアファイル=2月21日、東京都千代田区

 3月初旬、次は1泊2日で東海地方に向かう。静岡県の三島で新幹線を降り、伊豆箱根鉄道・駿豆線の三島駅へ。券売機で小銭を入れてボタンを押すと「31」と記載された乗車券が出てきた。この駅のお目当ては、和暦の切符。表記は4月に「19」と西暦に切り替わるためレア?な一枚だ。「今のうちに入手したい」と問い合わせが来ているそうで、同社広報担当の杉原理恵さんは「今買えば記念になりますよ」とアピールする。表記変更は、改元のたびに生じるシステム改修費を抑えるためで、訪日外国人の増加も意識したという。

和暦で「31」と記載された、伊豆箱根鉄道・駿豆線の乗車券=3月1日、静岡県三島市

 同じく切符では、日本旅行が改元をまたいで大阪と九州を往復するツアーを企画しており、特典として4月30日の行きは「平成」、5月1日の帰りは新元号が入った記念乗車券が付く。同社は改元の瞬間を貸し切りの夜汽車で過ごすツアーも計画しているという。企業も改元の商機を逃すまいと、様々な商品やサービスを打ち出しているようだ。

 アジのすしの駅弁を買い、再び新幹線に乗り込む。名古屋で在来線に乗り換え岐阜駅で降り、レンタカーを1時間ほど運転して岐阜県関市の平成(へなり)と呼ばれる地区に到着した。ここは山あいの6世帯ほどの小さな集落だが30年前の改元の時、元号と同じ漢字だったことから観光客や報道陣が押し寄せて大騒ぎになった。

 地区のある旧武儀町で改元当時、企画商工課長だった村上忠一さん(77)の元には、集落とコラボした商品を出したいとの申し出が企業から相次ぎ、対応に追われた。町長らと上京して官房長官の小渕氏にも面会した。町名を平成に変更するとの議論もあったそうだ。約40年の役場勤務の中で「一番燃えた時期だった」と話す。集落に住む田畑和義さん(64)も「特産のシイタケを土産として並べると、飛ぶように売れたね」と振り返る。

平成地区のあった旧武儀町で改元当時、企画商工課長だった村上忠一さん。地区には観光客らが押し寄せ、即席で木の飾りを土産に用意した=3月1日、岐阜県関市

 集落は今、再び脚光を浴びており、集落近くの「道の駅平成」は駐車場が満杯になるほどの盛況ぶり。愛知県刈谷市から妻と一緒に訪れた宮田源次郎さん(80)は「平成が終わる記念に初めて来たが、こんなににぎわってるとは」と驚いた様子だ。1~2月の売り上げは、前年同期に比べて4割増しで「平成まんじゅう」などのグッズもそろえた。4月1日には新元号発表の中継を見るイベントを開く。

平成グッズを用意し、にぎわう道の駅平成=3月2日、岐阜県関市

 昭和の末は昭和天皇の闘病で自粛のムードが強かったと聞くが、30年後の今回は楽しみながら改元を迎えようとしているみたいだ。もう少し各地を見て回ろうと中1日で、熊本に飛んだ。

 熊本市内のJR九州・豊肥本線にあるのは平成駅。ここも見物客が訪れており、JR九州広報の南里祐允さんは「改元後はこの駅を出発して旅に行くのも良いかもしれません」と提案する。写真を撮ってインスタグラムやツイッターに投稿する人も多いそう。平成の駅名の看板をバックに自撮りしたいが、恥ずかしいので駅名入りの切符を買って写真に収めた。

JR九州・豊肥本線の平成駅で購入した乗車券=3月5日、熊本市

 熊本からは11年に開業した九州新幹線に乗り込み、博多経由で関西に向かう。計5日間の出張で28歳の体は若干重みを感じているが、ゆったりしたシートで疲れも幾分和らいだ。最後に訪れたのは江崎グリコが運営する企業ミュージアム・江崎記念館(大阪市)。ここでは4月末まで、ハート形のお菓子「グリコ」の平成時代のおまけを集めた特別展を開催中だ。

 グリコは88年に60円に加えて100円の商品がラインアップに加わり、おまけも一回り大きくなった。平成時代のおまけは知育玩具の要素を取り入れ、親子が一緒に遊べることを意識したのが特徴だ。おもちゃは進化しており、最新の木製の動物はスマートフォンやタブレットのアプリで読み込むと、動物の生態が学べる。インターネットは今の子どもにとって、記者が小さかった頃よりずっと身近になっているみたいだ。木の乗り物や手のひらサイズの絵本など約260点がずらりと並び、懐かしいものはあるかなと見入った。

江崎記念館で開かれている、菓子グリコの平成時代のおまけを集めた特別展=3月6日、大阪市西淀川区

 改元に伴って4~5月は10連休となるが、欧米など遠方に向かう航空券は高騰しているという。身近な平成にちなんだスポットを探して訪れ、平成30年間に思いをはせるのも良いかもしれない。

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