意識せずともプラスチックを減らせる社会が理想――小島あずさ・JEAN事務局長

手前のカラフルな短いプラ管が、広島発祥の「筏式垂下法」で使うまめ管。プラごみは年々細かくなっていく

プラスチックの海洋への流出が続いている。数百年も分解されないごみに、どう対処すべきか。約30年前から海ごみと向き合ってきた一般社団法人JEANの小島あずさ事務局長に話を聞いた。(瀬戸内千代)

――JEANの海岸クリーンアップの目標は? 

世界で一斉に海ごみを調べる米国発祥の「国際海岸クリーンアップ(ICC)」に1990年に参加して、JEANを発足した。美化だけでなく対策を考えて、ごみを元から断つことが目標だ。

ICCでは、毎年秋に世界中で海ごみを拾って数える。日本では初回から80カ所で調査し、今は全国に約200人のリーダーがいる。91年にはレジンペレット(プラスチック原料)、97年には人工芝の破片の多さをメーカーに伝えた。

レジンペレットについては日本プラスチック工業連盟が対策を始め、つぶさに見る全国規模の市民調査の効果を実感できた。とはいえ、根本解決は遠い。東日本大震災でも、西日本豪雨でも、多くのプラごみが海に出た。10年間のつもりで始めたが、まだまだ終われそうにない。

――日本の海ごみの経年変化は? 

2017年はカキ養殖用まめ管(冒頭写真)が最多だった。次いで、硬質プラの破片、たばこの吸い殻とフィルターが多かった。まめ管と、プラのシートや袋の破片、飲料用プラボトルは、この27年間で順位を上げている。ペットボトルごみは、全国清涼飲料工業会が小型ペットボトル自主規制を廃止した1996年以降に増えた。

市民が任意で行うICCでは、量の変化は追えないが、分類して個数を数えるので傾向は分かる。十数年間の材質別カウントで、世界的に石油製品ごみが圧倒的に多いことが明確になり、品目別カウントに切り替えた。

破片は数えきれず、一時期、世界共通の調査項目から消えたが、日本では独自に残した。現在のICCは、品目別に加え、直径約2.5センチ以上の破片を材質別に数えている。それより小さなプラは数えないが、実感として増えている。

――海洋プラスチックの害とは? 

動物への絡まりや飲み込みは、普及当初からあった。漁船と巨大タイヤの衝突、ポリ袋を吸い込んだエンジンの故障、ごみによる漁網の破損も、非常に多いと聞く。

1997年に、ICC実施1カ月後の鵠沼海岸(神奈川県)で、10メートル四方の7区画の砂表面を調査したら、最多の区画で3万2258個のプラスチック片が見つかった。

マイクロプラスチックの害は未確定だが、人への健康リスクだけで論じるのは人間のおごりではないか。木片や生物とまざり、プラのみの回収は無理。危険に気付いてからでは遅い。

政府への請願署名。中央で手渡しているのがJEANの小島事務局長

――JEANは「日本も『海洋プラスチック憲章』に一日も早く署名を!」という2万3037筆の請願署名を、2018年12月に政府に届けた。回答は? 

何もない。海洋プラスチック問題は2015年のG7から議論されており、準備期間は十分にあった。新興国への支援も大事だが、率先してプラを広めてきた先進7カ国の一員が憲章に署名しない理由にはならない。

日本が推しがちなリサイクルは、あくまで対策の一つ。委員として参加した国の会合は会議室で終わったが、できれば現場を見てほしかった。漂着ごみも海外起因ばかりではない。

――国内のプラスチックユーザー(企業と消費者)への提言は? 

海外の仲間は日本の過剰包装に驚く。包む文化と湿気やすい気候とプラの機能性が相まって、使用量が増え過ぎた。環境省は「賢く付き合う」を掲げてプラスチック・スマートキャンペーンを展開しているが、「賢く減らす」のほうが適切ではないか。

この2年に主催したワークショップでは、プラ削減に意欲的な人でも、継続の困難さを訴えていた。個人の行動の変化に期待するのは限界があり、普通に暮らしても環境が悪くならない社会を目指したい。

賢く減らすためには、消費者側と作り手側がきちんと対話をして、新たな納得したニーズで商品やサービスを開発することが必要ではないだろうか。

小島事務局長は、プラスチックを賢く減らすためには使う側である消費者と作る側である企業が対話し、双方が納得したニーズに基づいて商品やサービスを開発することが必要だという

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