「薬物依存症を知って」 横浜で実体験元にした映画を上映

作品への思いを語る内谷さん =埼玉県内

 薬物依存症の実体験を元に俳優で映画作家の内谷正文さん(49)=茅ケ崎市出身=が14年間にわたり全国200カ所以上で続けてきた「一人体験劇」が映画化され、23日から横浜のシネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区)で上映される。近年は薬物が一般市民にも広がるなど問題が深刻化しており、内谷さんは「薬物依存症には刑罰だけでなく治療とケアが必要。多くの人に依存症のことを知ってほしい」と訴えている。

 タイトルは「まっ白の闇」。自ら薬物に手を出し、弟も巻き込んだ男性の家族の苦悩や回復までの姿を描いており、薬物依存症の回復プログラムや回復施設「ダルク」、依存症の家族をケアする「家族会」に焦点を当てた。2017年に制作され、昨年11月から都内を始め全国で順次公開されている。

 内谷さんは中学生時代に喫煙や飲酒を始め、16歳でシンナーに手を染めた。「とにかく格好付けたくて目立ちたかった」と当時を振り返る。22歳で芝居を始めるも並行して、マリフアナを使い続け、25歳ごろには覚醒剤にも手を出すようになった。弟が薬物で幻覚症状や幻聴でもがき苦しんでいる時にも「落ち着くから」とマリフアナを勧めた。「今考えると狂っていた」と打ち明ける。

 05年2月からは薬物の怖さと現実を知ってもらうため、全国の中学校や高校で薬物依存症をテーマにしたオリジナルの一人体験劇「ADDICTION~今日一日を生きる君~」を演じる。弟をどん底の世界に陥れてしまった悔恨を源泉に「自分が再び薬物に手を伸ばさないためにも演じ続けている」と内谷さんは話す。

 街中にはドラッグストアがあふれ、誰もが簡単に医薬品を手に入れられる。内谷さんは「市販薬の中にも過剰に摂取すれば覚醒作用が得られるものもある」と依存症の危険性を指摘する。

 「薬物依存症は回復するが、完治のない病気。ただ、回復へ光があることも事実」と語り、「薬物に手を出したとしても過去を悔やむのではなく、これから先をどう生きていくかが重要」と話している。

 上映は4月5日まで。期間中の計7日間、内谷さんと県内の各ダルク施設長や家族会代表者のトークショーも開かれる。問い合わせは、シネマ・ジャック&ベティ電話045(243)9800。

© 株式会社神奈川新聞社