ライダー平均年齢52歳、ターゲットは中高年 東京モーターサイクルショー

By 太田清

スズキの新型カタナ

 東京・有明の東京ビッグサイトで22日、日本最大級のオートバイ展示会、第46回東京モーターサイクルショーが始まった。バイクといえば、若者の乗り物というイメージが強いが、実は現在の二輪車購入者の平均年齢は52・7歳(2017年度、日本自動車工業会調べ)。ライダーのうち50代以上が占める割合は年々増え続け62%に。かたや、10代、20代のライダーは07年度には計17%だったものの17年度は同9%まで減少した。バイク市場をけん引する原動力は今や中高年齢層なのだ。モーターショーでも各メーカーは“主役世代”にアピールする新型車を発表した。  (共同通信=太田清)

 ▽レトロブーム 

 今回のショーの最大の目玉の一つがスズキの新型「KATANA(カタナ)」だ。スズキは1980年にカウル付きの大型バイク「GSX1100S KATANA」を発表。日本刀をモチーフとしたデザインは斬新で高い性能も相まって大きな反響を呼び大人気に。名車としての地位を確立し、2000年のファイナルエディションを最後に販売が終了した後も高い人気を誇り、現在は新車発売時よりも高い価格で取引されるなどのプレミアがついている車体もある。 

 同様のデザインを持つ新型の発売を待ち望むファンらの声は強かったが、スズキもようやく発売を決定した。ベースモデルは同社のスポーツバイク「GSX-S1000」で、旧型と比べエンジン形式こそ直列4気筒と同じだが、エンジン冷却は空冷から水冷になり出力も大幅にアップ。ブレーキやサスペンションは格段に進化し、ブレーキ時のスリップを防ぐABSや加速の際の後輪の空転を抑えるトラクションコントロールなどの電子制御を備えるなど、見てくれは古いが性能は最新だ。 

スズキの旧型カタナ

 日本で初お目見えした新型は旧カタナとともにスズキ・ブースの最前列に並べられ、多くの来場者が写真を撮影。さらに新型にまたがれるコーナーには長い行列ができるなど、注目の高さをうかがわせた。 

 こうした、古いバイクのスタイルに最新の性能を持たせてリバイバルさせるカテゴリーは「ネオレトロ」と呼ばれ、国内外を問わず各メーカーが最近、特に力を入れている。背景には、若い時に名車に憧れながらも経済的事情などで購入できなかった人や、結婚、育児などの事情でいったんはバイクから離れた人が中高年となり当時の名車の「新型」を見て、購入に至るといったケースに象徴される、シニア世代の根強い需要がある。

 川崎重工業(以下カワサキ)は2017年12月、往年の名バイク「Z1」をイメージした新型バイク「Z900RS」を発売し大人気に。昨年、本田技研(以下ホンダ)やヤマハ発動機を抑え、カワサキを小型二輪車販売台数トップに押し上げる牽引車となった。Z1はカワサキが1970年代に販売した排気量900ccのバイクで、当時としては最新型のDOHCエンジンを搭載。その斬新なスタイルと高性能が人気を呼んだ。現在も旧車として程度のいいものは300万円以上で取引されるなどマニアの間では絶大な人気を保っている。 

 マフラーなどオートバイパーツを製造販売しているヨシムラジャパンも新型カタナの人気を見越して早速、リプレイスマフラーなどの開発に着手。ショーのブースでも同社のパーツを装着した新型を展示し多くの来場者の関心を集めた。国内第1営業課長の細谷竜介さんは「新型の発表直後から海外も含めて多くの問い合わせをいただいた」とライダーの関心の高さを指摘したが、購入者は「40~50代が多数になるだろう」と予測する。 

高価でも 

 もう一つのトレンドはメーカーが、販売価格に糸目をつけず性能を追求したバイクを開発・販売していることだ。以前であれば開発費に見合う販売数を達成できるのを考え慎重だったメーカーの姿勢も、実際に販売すれば瞬く間に完売してしまう現実を前に積極的になっている。ここでも、購入の中心となっているのは懐に余裕のある中高年層だ。 

 カワサキは6月1日に発売予定の「ニンジャ H2 カーボン」をショーに出品した。スーパーチャージャーでエンジンを過給し、過給機の改良で最高出力は従来型の205馬力から一気に231馬力に。カーボン外装をまとい最新鋭の電子制御を装備、最高速340キロ近くの究極のバイクだが価格は356万4000円。高価ながら「当初販売分の受注は昨年12月から今年1月の受付期間で埋まった」(カワサキモータースジャパン広報グループ主任赤地佑介さん)というが、やはり発注したのは40~50代が中心だという。 

カワサキのニンジャH2カーボン

 一方、イタリアの高級スポーツバイクを中心とする名門メーカー、ドゥカティは6月発売予定のスーパースポーツ「パニガーレ V4 R」を展示した。スーパーバイク世界選手権のベースとなるモデルで同社の持つ最新の技術をすべて盛り込んだという車両は、最高出力221馬力(レーシングキット組み込みで234馬力)に対し乾燥重量わずか172キロとまさにレーサー並み。価格は455万円。マーケティング・コーディネーターの原佐知子さんは「若い人にはなかなか手の届かない価格で、40~50代が購入者の中心になると予想している」と語った。 

ドゥカティのパニガーレV4R

旧車 

 カワサキのZ1やZ2、スズキの旧型カタナ、ホンダのCB750FOURなど既に生産終了となって時のたつ旧車(絶版車)の人気も高まっている。今の時代にはないもの(2ストロークエンジンや小排気量4気筒、ターボエンジン)や独特のスタイル、懐かしさなどに魅かれ、レストアにお金を惜しまない人も増え、中古車価格もうなぎ上りだが、ここでも中心となるのは中高年。こうした需要を受け、いったんは生産を終了した部品を新たに生産・販売する動きもメーカー側で始まっている。 

 ホンダは2ストロークのNSR250R、CB750FOURに続き、CB750Fについても4月から一部部品の再販を決めた。再販決定とは関係のないことだが、ホンダのブースではCB92、CB750FOUR、CB750Fの誕生からそれぞれ60年、50年、40年を記念して750FOURやCB1000SFを展示した。またカワサキもZ1、Z2のシリンダーヘッドの再生産を決定、今秋から受注を受け付ける。

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