エコノミー症候群 簡便に判定 長崎国際大の隈教授ら開発 新試薬で迅速、安価に

 エコノミークラス症候群などの要因になる血栓ができやすい体質を見つける検査法を、長崎国際大薬学部の濱崎直孝客員教授や隈博幸教授らが開発した。近年は災害後の避難生活中の発症が問題化。2016年4月の熊本地震でも車中泊をしていた被災者が命を落とした。隈教授は「体質が分かれば行動を変えることができる。気軽に受けられるように広げたい」としている。佐世保市内の医療機関も導入している。

 エコノミークラス症候群は、飛行機での長距離移動や入院生活で起こることが多い。遺伝子の変異が発症のリスクを高めることも分かっている。血液の過剰な凝固を抑えるタンパク質「プロテインS」の遺伝子に異常があると血液が固まりやすくなり、血栓症の発生率が5~10倍に上昇。日本人の約2%が変異を持つとされる。
 従来の遺伝子検査でも異常を確認できたが、高額な費用や結果が出るまでの時間の長さが課題だった。新しい検査法は、プロテインSが血液を固めるほかのタンパク質を壊す力(活性)に着目。2008年ごろから全国の血栓症患者の血液を分析した。プロテインSの活性と量のデータを測定。活性を量で割った数値が0.78を下回ると変異を持つ可能性が高いと判断できることが分かった。
 専用に開発した試薬を使えば一般的な分析装置で調べられるため、通常の血液検査の一環として異常の有無を判断できる。遺伝子検査で数十万円程度だった費用は3400円程度に抑えられ、その日のうちに結果を出せるようになった。
 今後は認知度の向上が課題となっている。昨年からは佐世保共済病院(佐世保市島地町)や市内の産婦人科と協力し、体が動かせない長期入院者やホルモンの影響で血栓症になりやすい妊娠中の女性らの検査を始めた。プロテインSの異常は、流産や死産を繰り返す不育症とも関連するため、不妊治療を手掛ける県外の医療機関の検査も引き受けている。
 隈教授は「自分は大丈夫と思いがちな病気だが、体質が分かれば(災害時に)車中泊を避けたり水を飲むようにしたりするなど意識ができる。受けてみようと思われるよう普及させたい」と話した。

◎エコノミークラス症候群

 血の塊が突然血管に詰まる血栓症の一つ。狭い場所で長時間動けない状態が続くと足が圧迫され、血流が滞って血栓が発生。血栓が肺の血管に運ばれて詰まると呼吸困難や胸の痛みなどを招き、突然死を引き起こすこともある。近年は災害の関連死の原因になる例が相次いでいる。

「災害時などの行動を変えるために自らの体質を知ってほしい」と話す隈教授=佐世保市ハウステンボス町、長崎国際大

© 株式会社長崎新聞社