「甲子園 てっぺん狙え」高嶋氏 現役監督らと座談会

古里の“後輩”へ信念語る

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 高校野球の甲子園大会で監督歴代最多の68勝を挙げて昨夏勇退した智弁和歌山前監督の高嶋仁氏(72)=五島市出身、海星高卒=が今月、長崎市内で県内監督4人との座談会に参加した。参加者は過去5年間で甲子園に出場した創成館の稙田龍生監督(55)、海星の加藤慶二監督(44)、長崎商の西口博之監督(58)、波佐見の得永健監督(50)。高嶋氏は「(選手に)甲子園の独特の雰囲気を味わわせてやりたいという気持ちは退任した今もある」と述べ、日本一に向けた育成術をはじめ、タイブレーク導入や球数制限などについて持論を展開した。

■最上級を想定

 -まずはチームづくりについて。
 稙田 投手育成は素質を見極める。心は熱く、頭は冷静にいける選手。
 西口 (他の選手に)やかましく言える子を副主将に置く。ポジションの要は、最近は捕手。
 得永 野球は考える間が多いので、メンタルが弱いと通用しない。
 加藤 新チーム発足前にどれだけ基礎を詰めるか。時間との勝負。
 高嶋 気持ちが強い子は苦しい練習もどんどん乗り越えて、目に見えて上手になる。弱い選手は肝心な時に活躍しない。
 加藤 今は優しい子が多いが、それでも負けず嫌いにならないと無理だと常に言っている。
 高嶋 いかにプレッシャーを与えるか。例えば打撃なら、その年のナンバーワンの投手を想定して、球速はプラス10キロくらいにして練習する。田中将大(ヤンキース)、ダルビッシュ有(カブス)、松井裕樹(楽天)のとき、それぞれ想定した。それ以下やったら打てるっちゅうこと。

■校内の好循環

 -指導法について。
 稙田 高校生は分かっていなくても「ハイ」と返事する。それが最初に戸惑った。だから自分が事細かく勉強しないといけない。小中学校の指導書を読んだりした。
 高嶋 練習試合で相手の選手が監督にものすごい返事をする。「ハイ!」と。大体そんなチームには負けていない。大きい声を出しても、監督が納得しているだけ。
 西口 選手が監督や大人の目を気にしながらやっているところはある。
 高嶋 やらされる練習は身に付かないと言うが、やらせないとやらない。できあがっていないチームで選手任せは危険。高校生は体力的にも精神的にもまだ弱い。
 得永 うちはグラウンドよりも学校内での方がうるさく指導している。
 高嶋 なんで野球部のために応援に行かなあかんの、という雰囲気だけはつくりたくない。(智弁和歌山は)甲子園のチアリーダーも応援団も、出場が決まって臨時にできる。なりたい子は多い。成績で決める。だから勉強しないといけない。甲子園で思い切り応援したいから絶対に出てくれとめちゃくちゃプレッシャーをかけられる。そして、僕が選手にプレッシャーをかける。

■下級生を使う

 加藤 下級生のうちは意識が低い。学年が上がってきて教えても間に合わない。そこは難しい。
 高嶋 次のチームのことを考えて、レギュラーの中に必ず下級生を入れる。少なくても2人。最初はエラーしたり三振したりするが、試合をしながら育っていく。3年計画とか3年目はいいが、その間の選手たちは敏感。毎年甲子園を狙う。
 -ノックのこつは。
 高嶋 よく100本、200本ノックとか言うが、うちはしない。多いときで30本。数が少ないと選手は頑張る。でも捕り終えたら2時間かかっている。必死になって捕れるところに打つから100本どころじゃない数を打つ。それで少しずつ守備範囲を広げていく。

■議論を深めて

 -話題のタイブレークや球数制限について。
 得永 普通は練習試合は引き分けのまま終わるが、相手の監督と話して十回からタイブレークを取り入れたりしている。先攻で点を取ってプレッシャーを与えた方が有利と思うが、無死一、二塁のバントは難しいし…。強攻したときの方が点は取れている気はする。
 高嶋 球数制限はもうちょっと議論せないかん。意地悪な考え方をすると、公立のエースにええ子がいたら、ファウルで粘れ、3回で100球超せと言う。そしたら交代して勝てるチャンスが出る。それを考えるとどうかなと。昔的な考えかもしらんけど、時間をかけて議論してほしい。

■20回負けなし

 -智弁和歌山は予選の決勝までエースを温存すると聞いている。
 高嶋 温存するわけやないけど、元気な状態で置いときたい。決勝までいったら負けたくない。だからそれまでは3番手、4番手、5番手までどんどん使う。負けたら批判されるけど、責任を取るのは監督。過去に20回、夏の和歌山大会の決勝にいったが、1回も負けなかった。(2014年の)21回目に延長で負けた。采配ミス。ぼちぼち引退やなと感じた。
 加藤 夏の決勝は余力を残していかないといけない。投手の継投とか、失敗してでもチャレンジしないといけない。
 西口 (高嶋氏に)創成館を倒す方法は。
 高嶋 創成館と同じような練習をやっとったら勝てない。試合でも例えばチャンスで強攻やホームスチールとか、えーっていうような想像しないことをやる。あと、何か優位に立てるようなことをつくる。うちの場合は腹筋2千回。たぶん日本一。人がやらんようなことをやったら自信になる。人数少なくてもトップに立てる。日本一のことで自信を持たせる。

■言葉遣い大切

 加藤 逆方向に大きい打球を打てるようになろうと言っている。
 高嶋 逆方向に打つつもりで中堅越えの本塁打を打ちなさいと言う。右打席の選手によっては中堅から左方向に打ったら交代させる。たとえ本塁打でも。あと、脇を締めて打てと言うけど、僕はボールの内側をたたけと表現をする。言葉遣いで選手の理解は変わる。
 -長崎の野球が強くなるために必要なことは。
 得永 うちは小さな町で少子化や競技人口減少の問題に直面している。野球熱を消さないように諦めずやっていきたい。
 高嶋 大阪、東京とか甲子園優勝を狙うところにどんどん出掛けてほしい。Aクラスに負けて感じるもんがある。経済的な問題もあるが、大いに出ていってほしい。監督が甲子園でてっぺんを狙うという考えを失わないでほしい。そうすれば選手も上がってくる。
 加藤 僕だけではなくて若い指導者は今、選手にプレッシャーをかけにくくなっている。でも、しっかり精神的にたくましくするために、指導者がぶれずにやらないといけないのかなと思う。
 西口 ちゃんと理屈で説明しないといけない。
 稙田 日本一になりたい。長崎、九州の指導者が本当にどれだけ日本一を目指しているか。日本一になるためにやることをしっかりやる。厳しさを持ち合わせて、選手から信頼される指導者にならないといけない。

◎座談会の様子は4月13日午後4時からNCCで「頂点への道しるべ」と題して放送される。

選手育成や指導法などについて意見を交わす(左から反時計回りに)高嶋氏、創成館の稙田監督、長崎商の西口監督、海星の加藤監督、波佐見の得永監督=長崎市、NCC長崎文化放送