社説[オリオンTOB成立]沖縄に根ざした経営を

©株式会社沖縄タイムス社

 沖縄の特産品のことを「ウチナームン」と言う。オリオンビールは誰もが認めるその代表格である。高いブランド力は、買収によってどう変わるのだろうか。

 野村ホールディングス子会社の野村キャピタル・パートナーズと米投資ファンド、カーライル・グループは、オリオンビールに対する株式公開買い付け(TOB)が成立したことを明らかにした。

 両社が設立した特別目的会社のオーシャン・ホールディングスが、1月からTOBを実施していた。

 1株の買い付け価格を7万9200円に設定、22日の期限までに発行済み株式総数の84.21%の応募があった。

 残りの株式も買い取り、完全子会社化を図る考えだ。買収総額は約570億円。

 降って湧いたような突然の買収劇だった。

 「沖縄のビールが米投資ファンドにのまれてしまう」と危機感を募らせる県民が多かった。

 オリオンにとってTOBはどのようなメリットがあるのだろうか。

 問題の発端は、実績に比べて配当額が低い、と創業家一族の中から不満が噴き出したことだ。

 株主の高齢化が進み、相続問題も表面化していた。加えて、国内のビール市場は縮小傾向にあり、県内でのオリオンのシェアは5割を切る水準まで低下していた。

 現経営陣が苦渋の決断をせざるを得なかったのは、こうした背景があったからだ。

    ■    ■

 野村やカーライルはなぜ、オリオンの買収を決断したのか。両社が注目したのは並外れて高いブランド力である。

 それは企業努力の成果ではあるが、県民一人一人が「沖縄のビール」として愛飲し、守り育て、大事にしてきたことを忘れてはならない。

 オリオンのブランド力は、島の言葉や音楽など土地の文化に深く根ざしている。それがオリオンの強さだった。

 沖縄に根ざした企業としてのDNAを維持する、と現経営陣は強調する。その意気込みは評価したい。

 買収完了後、オリオンの嘉手苅義男会長が特別目的会社に出資することで、経営陣による自社買収(MBO)の形式をとった。

 だが、完全子会社になれば経営の主導権は変わらざるを得ない。「野村・カーライル連合」の下で、どのようにして沖縄DNAを維持し続けるのか。

 正直なところ今回の買収劇は、将来の姿が見えないため、不安要素が少なくない。

    ■    ■

 今後の経営に大きな影響を与えると思われるのは、酒税の軽減措置である。引き続き2年の延長が認められたものの、21年度以降の軽減措置についてはまったく未知数だ。

 本土大手や外国資本の傘下に入ることで、軽減措置打ち切りの圧力が高まるのは確実である。打ち切られた場合、どうやって収益を穴埋めしていくか。

 これまでオリオンビールを盛り立ててきた県民が引き続き愛着を持ち続けるような経営ができるかどうか-それが分かれ目になるだろう。