「ゆとり」と言うが…

 開花宣言が全国で最も早かった長崎の桜は、日本気象協会の予想だと4月1日に満開を迎えるらしい。的中すれば年度のちょうど境目であり、なにかと慌ただしく、そわそわする頃にぴったり重なる▲4月の末日には、平成の世が幕を閉じる。新天皇の「即位の日」の5月1日が特別に祝日となり、その前後も祝日法の定めで休日になるため、4月27日から10連休に入る▲過去にない長い連休は、ゆとりある生活を実現するためでもあるという。そわそわと慌ただしい桜の時季とは正反対-に思えるのだが、ゆとりどころか混乱も考えられるらしい▲世の中の10連休に伴い、かえって「働き過ぎ」になり得る仕事がある。飲食やサービス業がそうで、長時間労働を強いられないか、人手不足にならないか、と心配されている▲保育施設での一時預かりを希望する人は増える。時給、日給で働く人は、勤め先の休みが続くと収入が減る。例えば、連休中の一時預かりに補助を上乗せする-などと政府は対策を並べているが、果たして万全かどうか▲ひと月後、新時代の幕開けの実感と、ゆとりの実感と、ともども湧く人だけならばいいが、おそらくは大変な思いをする人も少なくない。年度の境目に限らず、時代の境目もまた、世はそわそわ、せかせかしているかもしれない。(徹)

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