ノンフィクション作家・最相葉月×長崎大学病院長 「胎児のはなし」刊行

 お母さんのおなかの中で、赤ちゃんはどう過ごしているのか-。そんな妊娠や出産にまつわる素朴な疑問から、医療技術の進歩に伴う課題まで幅広く取り上げた「胎児のはなし」(ミシマ社)が刊行された。ノンフィクションライターの最相(さいしょう)葉月さんが、長年にわたり胎児医療に携わってきた長崎大学病院の増崎英明病院長にインタビューし、生命の神秘に迫った一冊だ。

 増崎病院長によると、胎児は泣いたり、笑ったような表情をしたりしており、あくびと、しゃっくりは頻繁にしているのだという。

 超音波診断の進歩に伴い、子宮という「密室」の中の様子が「見える」ようになった経過を紹介。寝ているのか、起きているのか。おしっこや、うんちはどうしているのか。そうした胎児の生活実態も明らかにしている。

 遺伝子解析ができるようになって、胎児を介して父親のDNAが母親の体に入り込んでいるという発見ができたことなど興味深い事実も語られる。

 一方で、母体血を用いてダウン症など胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」が登場して、妊婦を悩ませる要因にもなっていることなど、生命倫理に関わる生殖医療の難しさについても率直に語り合っている。

 ユーモアを交えた平易な言葉での2人のやりとりは、医療に詳しくない人でも読みやすい。増崎病院長は「妊婦がいろいろ考え、悩み込んでしまう状況もあると思うが、元気にお産をしてほしい。妊娠では横に置かれがちな父親の役割がしっかりあることも知ってもらいたい。その一助に本書がなれば」と話している。

 四六判、320ページ。2052円。

 ■長崎県長崎市のメトロ書店は4月6日午後2時から長崎市尾上町のアミュプラザ長崎4階会議室で、増崎病院長と最相さんのトーク&サイン会を開く。メトロ書店で「胎児のはなし」を購入した50人に整理券を配布する。先着順。問い合わせはメトロ書店本店(電095.821.5400)。

「元気なお産の一助になれば」と話す増崎病院長=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

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