インディカー第2戦詳報:運も味方に18歳のハータが史上最年少で優勝。琢磨も実りあるレースに

 テキサス州オースティンにあるサーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催されたインディカー・シリーズ第2戦インディカー・クラシック。24日に行われた決勝レースは、コルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)がインディカー史上最年少記録を更新し、参戦3戦目で初優勝を遂げた。

 予選14番手から挑んだ佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、7位でレースを終えた。

 2月にサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われた2日間のオープンテストでルーキーのハータは最速ラップを記録したが、それだけでなく、4セッションのうちの3回で最速だった。

 その速さが本物だったことを、ハータ二世は予選4番手という結果で証明した。レースでもスタートでライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)をパスして3番手に浮上すると、そのポジションを保ち続ける、ルーキーとは思えない堂々たる走りを続けた。

 しかし、スティント終盤でのペースがハータは悪かった。2戦連続ポールポジションから逃げ続けたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)の速さは明確で、優勝争いは彼と、予選2番手だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)による一騎打ちになることが序盤のバトルで明らかになった。

トップ争いをするウィル・パワーとアレクサンダー・ロッシ

 しかし、パワーとロッシ、予選6番手から3番手までポジションを上げたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)の3人は、レース終盤のフルコースコーションによって勝機を失うことになった。

 60周のレースの44周目に、予選5番手だった驚異のルーキー、フェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ・レーシング)と、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が接触。ローゼンクビストがガードレースにノーズからハードにクラッシュし、フルコースコーションが出されたのだった。

ヒンチクリフと争うローゼンクヴィスト

 この時にまだ最後のピットストップを終えなかった面々は、ピットオープンになってから作業を受けるしかなくなり、順位を大きく下げざるを得ない状況に陥った。

 序盤からスティント終盤にペースダウンするためにピットタイミングを早めにしていたハータ陣営は、その不利によって決定的有利を授かることになった。

 パワーとロッシより、ハータのピットストップは1回目から1周早くなっていた。43周目にハータはピットに入ってフレッシュレッドを装着し、最後の戦いに備えた。そして、その直後にアクシデント発生。ピット入り口がクローズになってパワーたちはピットタイミングを逸し、ピットがオープンになってから作業を受けることに……。

 しかも、ここでパワーはギヤボックストラブルによりストール。レースに復帰することはできなくなった。

 ロッシは14番手でレース復帰し、そこから彼ならではの鬼神の追い上げを披露したが、9位でのゴールが精一杯。ディクソンは14位と、リスタートからほぼゲインなしでのゴールとなった。

■11周のスプリントバトルはハータが独走

 2位は開幕戦ウイナーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。終盤に2番手浮上で開幕2連勝のチャンスを得たかに見えていたが、残り10周のリスタートでルーキーに大きく突き放された。

「コールドタイヤで自分たちのマシンは動きが悪かった」とニューガーデンは逆転の可能性がほとんどなかったことを話した。1周で2秒ものリードを許した彼は、背後に迫るライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)を封じ込めることにフォーカスを移し、それは成功させた。

2位表彰台を獲得したジョセフ・ニューガーデン

 ハータは、「勝てるとは思ってなかった。表彰台を目指していた。最高のタイミングでフルコースコーションが出た。チームの作戦が素晴らしかったから勝つことができた」

「僕らはスティント前半が早く、後半は遅かった。だから最後のリスタートが残り10周だったのは僕ら向きだった。ニューガーデンはホイールスピンしたのか迫ってこなかった。僕は一気に差を広げることができた」

「僕がレッドタイヤを酷使してペースダウンするとニューガーデンは考えたかもしれないが、タイヤは最後までグリップを失わなかった」と初勝利を喜んでいた。

3月30日には19歳の誕生日を迎えるコルトン・ハータ

 開幕戦がトラブルによるリタイアだったハンター-レイは、第2戦でシーズン初表彰台となる3位フィニッシュを飾れたことで納得顔。4位は予選10位だったグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)で、5位は17番手スタートから大幅ポジションアップを成功させたセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)。6位は20番手スタートから大幅躍進を果たしたマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ)だった。

マルコ・アンドレッティとバトルする佐藤琢磨

 佐藤琢磨は、予選14番手から7位でのゴールを果たした。最後のピットストップでジャッキトラブルが出なければ、レイホールの後ろの5位になれていたレースだった。

「エアロをトリムするセッティングは失敗でした。パスした後に止まれない……などがありました。まだ自分たちのチームはマシンの力を最大限に引き出すことができていませんね。それでも7位でのゴールは良い結果出し、チームメイトも上位でフィニッシュしました。今回の経験とデータは次のバーバーでも活かせると思います」と琢磨は話した。

 ホンダは2019年シーズン初優勝をルーキーによって飾ることとなった。ハーディング・スタインブレナー・レーシングは今年からホンダユーザーとなったチームで、2戦目にして優勝。

 それは彼らのチームにとっても初勝利だった。ハーディング・レーシングとして走った初レースが2017年のインディ500で、その年は3戦のみ出場。2018年に初めてフルシーズンを戦った彼らは、このシーズンオフにインディライツをアンドレッティ・オートスポートと戦っていたジョージ・スタインブレナーと手を組むことになり、ハーディング・スタインブレナー・レーシングという新体制になった。

 チーム設立から通算23戦目での初勝利は、ハーディング・スタインブレナー・レーシングとしてだと僅かに2戦目での勝利となった。ポールポジション獲得より先に優勝を果たした。

勝利を喜ぶ共同オーナーのジョージ・スタインブレナー4世

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